ハトプリ・二次創作

「宙に輝け、満開の花」#4.

まず最初に。
今回の東北・関東大震災で被災された方々に
お見舞い申し上げます。

これは今週前半に書いていた物なのですが。
この緊急時にアップするのもどうかと思っては
いたのですが、あげさせていただくことにしました。

これは
「地球から他の惑星へ向かう人たちの話」
ですが、もしこのとき、こんな事態が起これば、
クルーの皆さんは間違いなく、被災地にレスキューに向かう、
と思います。ということで。

「自由と正義の名の下に・3」

いよいよ明日は、基地へ向かう。最後の準備に忙しい
つぼみに、話しかけるのは。

「今までのデータは、全て向うに送ってあるから、
安心しなさい。」薫子お祖母さんの言葉。
「本当に、あたしが引き継げるかしら?お祖母ちゃんと
お父さんがやろうとしたことを。」つぼみ、心配そうに。
「大丈夫よ、貴方ももう大学生。今まででも『試練』を
乗り越えてこられたでしょう?それに、
『それら』は『出来なくて諦めた』のではなく、
『そこでは出来なかった』だけのことだから。」

以前、幼い自分のせいで、祖母と父は大事な研究から
身を引かざるを得なかった。
「あの時は、
『プロメテなんかよりも、貴方のことが大事』
でしたからね。今でもそうだけど。研究そのものは
続けていたから。こうやって、データも揃えることが
出来たわけだし。」
薫子祖母、孫娘さんを安心させるように笑う。

「それに、あの時と違って、今度こそ、
『研究の成果』が要る筈だから。私はもう、年だから
現地へ赴くチームには参加できないけれども、これからの
貴方なら、きっと役に立てることが出来るはず。」

惑星プロメテにおける植生改造計画のほかに、もう一つ。
薫子祖母が手がけていたのは、
「プロジェクト遂行時におけるメンタルヘルスケア」であった。

言うなれば、
「いかに『こころの花』を枯れさせないようにするか?」
なのだが。

「何故今頃、『こころの花』が枯れることが心配なの?
御祖母ちゃん?」
つぼみ、祖母に尋ねる。「当初の、一番の目的」を果たした
今、誇らしく思いこそすれ、クルー達の「心が折れる」事など
あるのだろうか?

「今だからこそ、心配なのですよ。」薫子さん、すかさず返事。

「大きな目標がある間は、それを必ず成し遂げるという強い
意志があるから、かなりのことがあってもダメージを受けずに
済むんだけど。逆に目標を達成してしまったら、その先が見えづらく
なって、こころに隙が出来てしまうのよ。一番心配なのは、
今のクルーの皆が、かつての月影博士みたいになっていないか
と。」

「もしかして、『そこにいけば必ず幸せになれる』とクルーの皆さんが
思い込んでしまってるってこと?」つぼみ、尋ねる。

月影博士。ゆりの父親で、「こころの大樹」の研究者でもあったが、
『大樹さえあれば、幸福になれる』学説にはまり、ついには
「こころの大樹」そのものを探しにいく、と周囲に告げて
行方不明になったのだが、その後、思いがけない姿で対面することに
なった、その人である。

「貴方の言うことで、ほぼ間違いは無いわ。」御祖母ちゃん、
続ける。

「幸せは、誰かがもたらしてくれるものではなくて、自分で
掴み取るものなんだけど。いつの間にか、手段が目的に
摩り替わっていたとしたら、厄介なことになるわね。
…だから、つぼみ。」

改めて、孫娘と対峙する。
「みんなの心を、守って欲しいの。誤った道を歩まない
ためにも。」
「分かった、御祖母ちゃん。私、頑張るわ。」

昨夜の、薫子祖母との会話を思い出していた矢先。
つぼみは、そういえば、車を運転している、隣席の先輩に
なる女性に対して、奇妙な違和感を何故だか感じていた。

どうして、この女性はこんなにも明るく笑っているはずなのに、

どこか無理を感じるのだろうか?

笑顔の裏に、昏い翳りが見え隠れするような。

気のせいではなく、確かに「感じる」。
昨日の、「彼」の表情でさえ、そう思わせるものが
あった、と密かに確信した、丁度そのとき。

ブレーキの音。
「着いたわ。」
(#3・了。土曜日頃、次回分アップ予定です。)

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「宙に輝け、満開の花」#3.

「自由と正義の名の下に・2」

花咲つぼみが新クルーに着任する、ほんの少し前になされた、
旧メンバーに向けられた内示にて。

「こんなに若い女の子が次のクルー候補なんですか?
時代が変わったというか。…あ、すまない;。」
近くにいる「歴戦」オペレータの物言いげな視線を
感じて、秀人、発言を修正する。

次のプロメテへのフライトに向けて、新たなクルー候補が
現メンバーに提示された。

前回、目的地到着寸前で合流した、
『元・ドップラー軍団』のメンバーもさることながら、
いざ、現地に到着してみると、地質学・植物学関連の
専門家が「非常に」手薄どころか「皆無」であることが
判明した。

本来が、「現地調査」であるはずのこのフライトが、
実際のところは、
「推進派同士の内ゲバ」となったところからも、
どういった人選がなされたかが窺い知れるところ
ではあるけれども。

それ以上に。
何ゆえ、再び「地球」に一時帰還せねばならなかったのか。

実際は「別の目的」があるにせよ、表向きは
「新天地への誘い」である。実のところ、未だに
「移民反対派」の声は、依然としてまだあるわけで。

こちらでは「調査過程での、ドップラー派との抗争」は、
「なかったこと」にされていた。
もちろん、現場からは大いにブーイングはあったのだが。

どれだけの人が犠牲になったと。
それらを無視するのかと。

実のところ、あれだけの規模の戦闘が繰り広げられた
のである。それ以前にも、有識者の失踪などが続いていた
ので、完全に「なかったこと」にはならずに、
「都市伝説」という形で人々の口に登っているのではあるが。

そういった、「推進に隠れた闇」を払拭するためにも、
「植物関連のエキスパートである、若い女性クルー」が
新たに加わることが、自ずと必須になっていた。

「要は、マスコミ対策かよ。」うざそうに、秀人がちら、と
『相棒』のほうを見てつぶやいた。

(『奴ら』のせいで、こいつは子どものころから
散々酷い目にあってきたというのに?)

「そう言うな。使えるものは使えばいいだろう?」
相方を諭すが如く、答える。
「・・・大人になったな。このあたりに関しては。」
なけなしの皮肉をこめて、秀人、言葉を投げ返す。

「このあたり、の他はまるで成長してないみたいに
聞こえるけど?気のせいじゃないよな?」
絡む『相棒』。珍しくしつこい。

「静かに。これは『こちら側』からの要請も含まれた
人選であることを、あらかじめ皆に伝えておく。」
大江戸博士が空気を戻す。静まる一同。

「今回の計画には、本来なら『あの』花咲博士も
参加するはずだった。」

「花咲博士といえば、親子二代で
『植物が環境と人の心理にに及ぼす影響』を
研究されていた、その方面での権威だった?」
「でも、突然、一身上の都合でこの計画から
退いた後、一切音信不通になっていたという?」
エース2人が、相次いで問いかけると。

「そのとおりだ。過去の記憶のシミュレーション
システムの開発にも、深く関与されていた。長い閉鎖空間下での
生活上でのメンタル系維持関連でも、本当ならもっと
勧められていたはずだったのだか。今回加入する
『花咲つぼみ』は、博士のお孫さんにあたる。」

「こちらとしては、途中で棚上げとなったメンタルヘルス関係の
研究も、是非孫娘さんである彼女に再開してもらいたい。そう思い、
交渉したら、快く承諾してくれたのだ。」

「こちらも、『親の意思を継ぐ子ども』って訳ですかね?」
思わず、口を挟んだ秀人。

ーーここにも、『そんな子』がいるんだ。どれだけ
いるんだよ、全く。
声には出さなかったが、心の中で彼はつぶやいていた。

そして、今日。
花咲つぼみが、この基地にやって来る。
(第2話、了。次回に続きます。)

第3話は、来週の土曜日頃にアップ予定です。

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「宙に輝け、満開の花」#2.

「自由と正義の名の下に・1」

「え、と。ここで待っていればいいはず、
なんだけど。」
つぼみは潮風来る駅前の停車場で、「迎え」を待っていた。

彼女が行くべき先である、
「ジャスダム基地」は、今は、以前建造されていた
「飛島」にある。ここはいわゆる「離島」にあり、
出入りには専用の連絡船もしくは地下トンネルを
通るかのいずれかのルートしかない。当然、
「これから」のものにとっては交通手段が無いも
同然であり。しかも、関係者以外は立ち入ることも
出来ないように、厳重なチェックがされているのは、
もはや言わずもがな。

「迎えのものをよこすから」待ち合わせ場所を
あらかじめ指定されたいたつぼみは、まずは
それに従うしかなかった。

「誰が来てくださるのかな…。昨日の、あの人
だったら凄く嬉しいんだけどな。」
この年頃の女性の、極めて当たり前な期待。しかし、
仮にも
「このミッションにおけるエースパイロット」である
人物が、新人の迎えになど来るはずもなく。

「つぼみ、昨日のあの人が来てくれる事考えてるですぅw。」
シプレから早速のツッコミが。「ぬいぐるみ」としてかばんの
中に入ってもらっていたはずなのに、いつの間にかつぼみの
頭の上の「定位置」に。

「違いますよ、シプレったら;。」余りのど真ん中ぶりに
真っ赤になっているところに、

「貴方が、花咲つぼみさんかしら?」
車のドアが開いて、凛とした、それでいて華のある
若い女性の声。
「え、あ…はい!そうです!!」
いきなりの呼びかけに、狼狽するしかない、つぼみ。
当然、シプレも固まってしまい。

「頭の上にぬいぐるみを乗せてる?…」小さな女の子なら
ともかく、妙齢で、なおかつ「色々といわくあり」なはずの
若い女性が、

ぬいぐるみ on the head というのは余りにも
シュールではないか?

「すいません。これ、しまいます!」あたふたとかばんの中に
「それ」をしまいこむつぼみの姿を見て、微笑む彼女。
「大丈夫、あわてないでいいから。」
もしかしたら極度の緊張から来るものだったのでは、と
それなりに状況を解釈し、できる限り、この「妹分」になる
はずの新入りをリラックスさせないと、「彼女」は考えて。

「初めまして、花咲つぼみさん。私は霧野リサ。ジャスダムでは
オペレート担当しているの。」初めて会った人ならば思わず
引き付けられる、華やかな笑顔だったのだが。

「ええええ!ということは、第一期チームの『紅一点』さんで、
すなわち、
『あの人』の『そういう人』おおおお!!」
逆効果;。昨日のことを思い出したつぼみは、ますますパニック
状態に。当然だ。まさかこんなに早く『本人』に出会うとは。

明るい金茶色のセミロング。光に当たれば金色にも見える。
切れ長の鳶色の眸。清楚な外見にも関わらず、機敏な物腰は
何気に友人である明堂院いつきを思い起こさせる。

「貴方が、あの花束を選んでくれたのね?有難う。
あれだけ見事なチューリップを見たの、随分久しぶり
だったから。是非、直に会ってお礼が言いたかったの。」
「あ、いえ、とんでもないです。こちらこそ。
お客様のリクエストにお応えしただけだったので。」

「地球では、異常気象がすっかり当たり前になっていて。
…チューリップですら、自然では咲かなくなって久しいし。
本当なら、今の時期のチューリップは『春の使者』のはず
なんだけど。」
「チューリップ、お好きなんですか?」
「ええ。『春』そのものだしね。それに、花言葉も可愛らしい、
というか。」
「チューリップの花言葉、ご存知だったら、ごめんなさい。
白と黄色、できれば避けたかったんですけど。」
「いいのよ。彼のことだから、きっと気にしない、とか
言ったんだろうし。」くすくす笑いながら。

さすが、見てきたような図星っぷり。言葉の裏に見え隠れする
「絆の積み重ね」を垣間見た気がした、つぼみだった。

「こうしてみてると、ちっとも心配するところなんか無いのに?」
あのとき、「彼」が見せた、憂いた表情。

数々の「思い」をはらみつつも、車は目的地へと向かっていた。
(1.了。2に続く)

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「宙に輝け、満開の花」#1.

さて、二次創作です。
「花咲さんが宇宙を目指してプロメテ計画のメンバーに
なる」という設定です。ちなみに、彼女の年齢は20歳ごろ。
兄さん姉さんたちは22歳くらいかと。

無事にラストまでいけますようにw。

「宙に輝け、満開の花」

プロローグ。

「いらっしゃいませ…うわ」
花咲つぼみが店番をしている
「フラワーショップHANASAKI」に「彼」がその姿を見せたのは、
まだ春も浅い、休日の昼下がりだった。
「サテライザーを操縦してるって言う、あの人
…一文字タクマ!」

惑星プロメテ調査隊が、最初にかの地を踏んでから
しばらく。報告やその他の目的もあって地球に帰還
してきたという。そのマスコミの騒ぎたるや。

さまざまな環境・人口問題の極めて有効な対策として
「惑星移民」を唱えてきた政府である。その第一陣である
調査部隊が帰ってきた。もちろん、本来ならば「かの地」に
本部を設置し、こちら側から必要な人材や機材を送るべき
なのだが。

今後のために、新たな人材を補給する。そのための
一時帰還と相成ったという。

もちろん、有史以来の快挙をなしたクルー達を、マスコミが
放っておくわけもなく。開発チームの中枢はもとより、
中心的な役割を担った若手のパイロット達などはさながら
アイドルのごときはやされぶりであった。

だが、当の本人達はこの騒ぎが嫌いらしく、ほとんどの取材を
断っていたのだが、
「これからの子ども達のために」最小限取材に応じていたので、
一応顔と名前だけはほぼ全世界的に有名となっていた。

「あの人が、このお店に来るなんて!」
驚き、というものでは済まされなかった。今や、
世界中の人たちの羨望の的となっている、「彼ら」
が、店の客人となって、自分の目の前に居る。

「花を贈りたいんだけど。詳しくないから、本当、
何も判らなくて。色々と教えて欲しいんだけど。」
花は、詳しくないから。まあ、妥当だろう。この年頃の
男性としては、真っ当な物言いかも。

「ご予算は、どのくらいですか?」
これも然り。まずはこれが判らないと始まらないし。
それにしても、こういう現実的な話をまず最初に
しないといけないとは。判っていても残念だと思う。

昔から、ある程度の品質の花卉は、それなりの値段が
付いており。それに輪をかけて、現在の異常気象のご時勢
である。

季節の境界がすっかりあいまいになっている昨今、もはや
温室ではなく、花卉栽培は完全に人工照明の下の元でしか
営まれない、工業製品と化していた。

それならば顧客のニーズにこたえるべく、いつでも希望の
花卉を揃えてあるのかといえば、以外にもそうではなく。

「季節には、季節に合ったものを」求める客がそれでも
ほとんどであるため、そういった品揃えになっている。
花卉だけでも「季節」を感じたい。せめてもの
願いが、こんなところにも表れている。
それらのこともあり、昔以上に花卉は「高級品」になって
いるのだが。

「…多分、大丈夫だと思うから」
そもそも、国際公務員、という言葉があるとしたら
まさしくそういう立場である「彼」に、こういうことを
聞くだけ野暮だったが。

「どなたに、贈られますか?」プライバシーに踏み込みそうだが、
これも大事な情報である。聞かざるを得なく。

「若い女性。」
「どのような内容で贈られますか?」
「記念日、というか…。何というか…。」
やや困ったような表情。どう説明したらいいだろう、
そんな感じ。でも、決して嫌ではなく。

これを渡されたら、どんな風に喜んでくれるだろう?
きっと、凄く綺麗な笑顔を見せてくれるに違いない、
と、想像している、かのような。

「こんなに優しい表情をする人なんだ。」つぼみは
「彼」に対して、新たな驚きを感じていた。

きっと、大切な人なのだろう。恐らくは、恋人とか。
でなければ、こんなに真剣に、

「どの花を選べば、一番喜んでくれるか」などと悩まないで
あろうし。

「向日葵とかは…。ごめん、さすがに季節外れだな。」

「冬」に「寒さ」がなくなって久しい昨今。暦では
春の初めであるとはいえ、さすがに「夏」を体現する
花である「向日葵」は、かえって季節の曖昧さを思い知らされる
ものであり、歓迎されざるものである。しかし。

そういえば、昔、同じようなお客さんがいたっけ。
あの時は可愛い女の子だったけど。
そのときのことを思い出しながら、つぼみは「彼」に
説明した。

「向日葵は、昔以上に季節に拘られるお客様が多くて。
さすがに今はまだ早いです。でも、その代わりといっては
何ですが。」お勧めを切り出そうとしたとき。

「へえ…。チューリップって、こんなに綺麗なんだ。」
色とりどりに並ぶ、チューリップの数々。本来の季節的には
まだ早いが、季節少し先取りが基本の花屋では、今の時期の
メインは、もっぱらこの「春の使者」であり。

「そうです。綺麗でしょ、この子達。色だけじゃなくて、
花の形だって、一重だけでなくて、八重咲きとか、それこそ
薔薇や牡丹みたいに豪華なものもありますから。」

この花屋は、実は他の店より圧倒的に品数が多い。いわゆる
「自家工場」的なことをしているせい、だが実は。
今では絶滅してしまった「種」の保存もしているのである。
これは、元植物学者であった父親と、その方面では世界的
権威的存在であった祖母・薫子の研究の成果でもあった。

「一人娘のメンタルを重く見て」研究の第一線から遠ざかった
花咲教授であったが、それでも店舗兼住宅であるフラワーショップ
に併設された「ミニ植物園」には、今では露地栽培では繁殖不可能と
なった諸々の植物の姿がある。これもまた、教授の地道ではあるが、
貴重な活動が実を結んだものであった。

「さすが、花咲博士だな。」小さくつぶやかれた言葉。
「え?おばあちゃんを知っているんだ、この人。」
祖母・薫子が「プロメテ計画」に多少は関係していたことを、
つぼみは一応は聞かされていたが、それでも目の前の
「当事者」から祖母の名前を聞くと、事の重大さに
ただ感嘆するしかなくなってくる。

「どれも皆綺麗だから、あるだけの色、花束にして欲しいん
だけど。…おかしくなるかな?」
「大丈夫です!沢山あればあるほど、賑やかで華やかに
なりますからw。チューリップは、形がシンプルだから
色が沢山あっても綺麗にまとまるんですっ。」

やっぱり、恋人さんに贈るものなんだ。思い切り、頑張らなくちゃ。
だって、チューリップの「花言葉」はほとんどが「愛」なんだから。
つぼみ、ここであることに気づく。

「白と黄色は一緒にしたくないな…。」
「白いチューリップ」の花言葉は「失恋」
「黄色」のそれは、「見込みの無い恋」

ヴィジュアルとしては、いい「さし色」になるけれども、
「花言葉」を知っているものとしては、何気に避けたくあり。
何気なく、この二色だけは入れないで居よう、としていたら。

「白と黄色もお願いできる?凄く綺麗だから。」

先手を打たれる;。お客様の需要にこたえるのが
店側の勤めである以上、オーダーに逆らうことは出来ず。

「はい、分かりました。」出来るだけの笑顔を返しながら、
しかるべき包装をしていた、そのとき。

「もし、何か言われとかがあるんだったら、そんなの一切
気にしていないから。」

唖然。一瞬ではあったが、またもや先を越される。思わず
「彼」と目が合ったつぼみ。もしかして、先を読まれてる?
「…有難う、ございますっ!」思わず作業を急いで、動揺を
ごまかすつぼみ。

それにしても、こんなに思われている、この人の「恋人」って
どんな人だろう?同じ女性として、羨ましくて。

結局、総勢50本ほどで、両手で抱えないといけないほどの大所帯に
なった、チューリップの花束を抱えて、「彼」は店を後にした。

「これを見たら、どんな顔するかな?」恐らくはこれ以上無いほどの
優しい表情をしていた、「彼」。つぼみは、別の意味で驚いていた。

「明日から、あの人が居るところで働くことになるんだ…!」

ジャスダム第二期クルーであり、プロメテ植生改良プロジェクト
第一期メンバー。つぼみの明日からの役職である。今日は
「学生最後の休み」ということで店の手伝いをしていたのだが。
彼女にとっては、とんでもないサプライズとなった。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・

「わあ、綺麗!こんなに沢山のチューリップが、まだ
『ここ』にあったなんて!」
思っていた以上のサプライズ。贈られた「彼女」は
「かつて」と同じ、華やかな笑顔で、好意に報いてくれた。
ジャスダムチームの紅一点・霧野リサ。

「…で、どうでした?新しいクルーになるはずの、
『植物学者・花咲つぼみ』先生は?」
「え?そんなつもり、無いけど・・・。」
「相変わらず、誤魔化すのが上手くないわねw。
今時、こんな見事な『花』があるところなんて、
あの「花咲植物研究所」のほかにどこがあるって
いうのかしら?」

図星、である。自分達の新しい仲間になるという、
経歴の割には、かなり歳若い「彼女」がどのような
人物か。偵察も兼ねていた、というよりは。

そういう人なら、どんな「花」を選んでくれるのだろうか。

それが一番の理由ではあったが。

「でも、有難う。嬉しいわ。さて、どこに飾ろうかしら、
こんなに沢山のチューリップ。まずは花瓶から探さないとね。」
そう言って、大きな花束を抱えて艦橋から出て行く彼女の後姿を
見送りながら。

久しぶりに見る、彼女の華やいだ笑顔。
きっかけを作ってくれたのは、あの花束。それを造った
「花咲つぼみ」なら。

「きっかけ」を作ることが出来るかも知れないと。

「明日、来るんだよな、…あのお嬢ちゃんは。」
「タクマ、貴方も手伝って!」
「あー、分かったよ、今行くから!」

それは、つぼみがジャスダムにやってくる、ほんの前日の
出来事だった。

(プロローグ、了)

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