前回から多少時間が空いてしまいましたが、続きです。
その間。実はこれを上げるかどうか迷ってましたが、
入れることにしました。次回でやっとシーン変わるかな。
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「静かなる嵐、荒ぶり叫ぶ凪」
回想。よくある会話。ほんの些細な。
「リサが飛行訓練してるんだって?」
ある日、奴(嵐士)から聞かれた質問。
「ああ、そうだけど?…って、もう知ってるのか。
一応は『関係者意外禁則事項』になってるんだが?」
秀人、しれっと流す。
「隠しておくほうが無理ってもんだろう?時間外に
施設が使われてるのがずっと続いてるんだから。
公然の秘密って事くらい、誰が見たって判る。」
かなり持ち場の離れている『奴』にさえ、もはや
知れ渡っている、、と言うことか。
「姫様御自らの願い出だそうだ。調査や偵察するのにいちいち
パイロット付けてもらうわけにいかないから、だそうだ。」
「理にはかなってる、な。一応。今のところ『情報・諜報担当』
としてはむしろ、それくらい出来てしかるべきなのだろうし。」
奴、言葉の上では納得しているようでも、本心は必ずしもそうではない
と言うのが、表情や言い回しやらにありありと見えている。
「そもそも、あの調査艇自体、余り大型ではないからな。あくまでも
フットワークの良さを優先して、装甲やら機関系やらがかなり軽量・
簡略化されている。それこそ、業務で乗り回すのには、ガタイのでかい
大人の男よりも、女性の方が向いているくらいだからな。」
「メカニック関係はさすがだな。そういえば伴太が『あれ』に乗れない
事を悔しがってたが、そういう事情だったのか。」
奴。エンジニアだけあって、観察力、洞察力、推察力が素晴しい。
だが、奴の話はまだ続く。
「ただ、それはあくまでも平常時の一般論であって。今のように
常に有事の際を最優先する状況では、また事情が変わってくる。
…彼女は、そこまでの訓練が出来ているんだろうか?」
「専属パイロットじゃないからな。そこまで深くは関われてない
と思う。基本、自分の勘と経験で局面を判断するではなく、
コンピュータがはじき出すデータにしたがって行動する、みたいな
感じだしな。あくまでもオペレータがメイン業務だから、彼女は」
「そうか…危険だな。」
「え?」
同僚の意外な言葉に、思わず聞き返してしまった秀人。
「だから、危険なんだよ。経験値の低い余所者が、多少の
腕があるからって、今みたいに、いつ何が起こるかわからない
非常時に出しゃばるのは。」
普段は穏やかな彼が、珍しく熱の篭った自説を説くのに、
思わず引きこまれてしまう秀人。
「誰も気づかないのがおかしいんだけど。と言うか、もしか
したら、わざと気づかないふりをして、彼女の思うように
させている、とか。」
「嵐士、お前…何が言いたいんだ?」
秀人、そこから導き出されるであろう推論の結果に思わず、
声を荒げそうになる。
「彼女は、リサは。…表向きはともかく、本音のところは
タクマを追いかけたいんだろう?ただ見ているだけでなく、
自分も何か役に立ちたいとかで。」
遂に「言葉に」表してしまった。誰もが思いつくけれども、
敢えて口にしなかった「真実」を。
「彼女の立場なら、思っていても、迂闊に最前線に出るべきじゃ
ないんだ。そもそもあの人は、大江戸博士の秘書、と言うか
業務サポートから関わってきてるだろう?自分自身が
『歩く最重要機密』であることをもっと自覚しないといけない。
それなのに、そんな危なっかしいことを上層部が許可してるなんて。」
「キャプテンが存命なら、そんなことは決してさせなかっただろうよ。」
秀人、途中で言葉を塞ぐ。
「つまり、『そういう立場』であることすら、自覚してないんだろうな、
あの女は。」
奴、いきなり話を終わるほうへ持ち込む。そして。
「それほどまでに『想って』もらえるの。…羨ましいかな。」
「嵐士、お前…?」
「秀人、悪かったな、つまらない話に付き合わせてしまって。」
『話』はそこで打ち切られる。言い出したものの意思によって。
だが、顕れた『想い』は消えることなく、今に至ることになる。
「あいつも、俺と同じ…だったのか。」
後日。奴が危惧したとおりのことが起きてしまい、奴自身も
そのときのアクシデントに巻き込まれて絶命してしまった。
だが。
実妹である凪に、例え僅かでも何某かを語っていたとすれば。
「そういえば、奴は名前とは裏腹に、随分と穏やかだったな。」
翻って妹はと言えば。
「嵐が、来るな。…どうやら外だけじゃ、なさそうだ。」
では自分はどうすればいい?改めて秀人、己に問いかける。
<了>
一応、一連のくだりは一段落です。次回からはまた新場面より。
こんなに引っ張るとは思いませんでした。いや言葉は生き物だ。
ではまた。
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