2199二次創作

まよいのもり。

時系列的には「生き返り」直前ですが、ノラ雪です;。一応
「雪さんてこんな人」とある程度設定固めてます。まあこんなことも
ありかと思いつつ。
しかしなー;自分で書いてて何ですが、2199雪さんは、
古代さんよりノラン君選ぶ方がしあわせになれるんじゃね?と
つくづく思ってしまうのは邪道でしょうか;。
(汗)

1.

「何で『姫様』がこんなところに居るんだよ!?」
彼は目の前にいる、『彼女』の姿を見て驚いた。

ノラン・ロシェット。元・ザルツ人にしてイスカンダル要人護衛兵
だったもの。第二バレラス破壊時に、自らの身体と生命を、
「ユリーシャ姫」の身辺の安全と引き換えた。それゆえに、現在。

こうして、「某所」を一人歩いているはず、だった。惑星「テロン」の
某国あたりでは昔から、「黄泉平坂」とも言われているような場所を。

「彼女」は、純白だが飾り気のないロングドレスを着て、そこにいた。
彼が知っている「彼女」は、身体の線が極限まで露わになった黄色いテロンの服、
もしくはイスカンダル風のロングドレス。
あるいは、最後に見た、ガミラス軍の宇宙服の姿だけだったのだが。

そのいずれでもなかった。

純白のドレスと言えば、民族的には婚礼衣装が多いのだが、死出の旅の
装束なところもないわけではない。そして、「彼女」のものはと言えば。

明らかに後者寄りであった。

「…姫様!なぜあなたがこのようなところを、こんな格好でいらっしゃるの
ですか?!」ノラン、思わず声をかけて近寄った。
「ノラン君?…ノラン君なのね?!また会えるなんて!」
「あなたはここに居るべき人ではないはずなのに、いったいどうなさった
のですか?」
あの時、確かに二人とも生き延びられる確率はゼロに近かった。しかし
ノランはどうしても彼女に「生きて」欲しくて、

彼女を「外」へ突き落した、のだった。そして、身代わりになった自分が
「死んだ」はずだったのに。

「…セレステラ、見かけなかった?私、彼女を追いかけてたはず
だったのに、いつの間にかこんなところに来てしまって…。」
気丈な「姫様」も、流石に今回ばかりはしょげている。それどころか、今にも泣きだし
そうではないか?一体何があったんだ?本当にこの人は、目を離したら!
…いや今はそんなことを言ってる場合ではない。どう考えても、深刻かつ
重大な事件が起きたとしか。

「セレステラ?あの、総統閣下御付だった、ジレルの魔女と言われた人ですね?
何があったのか、教えてくださいませんか、姫様?」

2.
ああ、やってしまった。折角繋いだ「命」だったのに。いずれこうなって
しまうかもしれない、とは気づいていたから、自分はそうならないよう、
いつでも「命がいくつあっても足りない」状況に陥る羽目となっていた。

姫様。この方はあまりにも、人のために後先構わず頑張りすぎる。
収容惑星のときでも、自分を庇うあまりに、博打勝負に出てしまったし。
たまたまあそこの所長が俗物中の俗物で、「イスカンダル」がどのような
方々か知る由もなかったから良かったものの。

本当の「イスカンダル」様は、決してあんなことはなされない。見るものが
観れば、一発で「偽物」とばれてしまい、次元潜航艇一味もろとも詐欺の罪
などで逮捕されてもおかしくなかったところだった。

そのほかにも、おそらくは自分を気遣ってくれたのだろう、何気ない会話の
つもりで、

「綺麗な月ね。」などと、言わなくてもいい一言をおっしゃられたり。

夜空に浮かぶ青い星、イスカンダル。そこで生まれたお方が故郷を
知らないはずがない。あの時も自分と二人だけだから良かったものの。

それ以来、自分が姫様を護っていたのは決して長い時間ではなかったに
せよ、万が一、真実が明るみになった時のことを考えると、ずっと生きた心地が
しなかった。

そういえば、そうだったな。今はもう「生きて」いないのに、今のほうが
ずっと楽なのは、そういうことだったか。

「姫様は、また悪い癖が出てしまいましたね。人のために頑張りすぎる
癖が。」生前ならば、こんな説教じみた物言いは出来なかった、はずである。
「悪い癖?私が?」姫様、あっけにとられる。
「どうして?セレステラは自殺なんかすることなかったのよ?折角
大好きな人と再会できたのに、大切に思われてないはずなんてなかった
のに!死んでしまったらお終いじゃないの!だから私は!」
かなり強い口調。さっきよりもっと涙声になっておられる。こっちが
泣きたいくらいなのに。

「あなたが巻き添えで亡くなってしまったら、それこそ何してること
じゃありませんか?姫様。」
「え?!私、死んじゃってるの?」
「…気づかれるの、遅いです。ここは『この世』と『あの世』を繋ぐ
場所ですよ?」
「セレステラ…間にあわなかったんだ…。」

どうしよう。とうとう泣き崩れてしまわれた。どうすりゃいいんだ。
というより、どうして自分のことよりも、魔女のことを先に心配できるんだ、
この人は。それよりも。

姫様、自分にしがみついてしまってる。この調子じゃ、しばらく泣き止みそうも
なさそうだけど。

自分的には、ものすごく美味しい状況…なのかな、これ。姫様には申し訳
ないけど、今自分、すごく嬉しい。こんなに頼られてるなんて。

こんな近くで、姫様の顔、初めて観る。本当に、泣いてる顔も綺麗だな、この方は。
もうしばらく、このままでもいいかな。どうせ急いでる訳じゃないし。
落ち着かれるまで待とうか。

「ジレルの魔女は。」
どれくらい経っただろうか。姫様が泣き疲れて大人しくなった頃を見計らって
声をかけてみた。
「聞いた話で確かではないですが、身体は滅んでも魂は永遠に生きられるんだそう
です。だから何れまた新しい身体でこの世に現れることが出来るそうですから。
セレステラさんも。」
「どこかで会えるかしら?私もっとあの人と話をしたかったから。」
「ええ、会えますよ、きっと。」
自分が貴女とまた、巡り会えたようにね、と心の中でつぶやきながら。
「やっと…笑ってくださいましたね。安心しましたよ。」

「でも、人のためとはいえ、無茶ばかりしないでください。少しは心配
かけられる方のことも考えて下さらないと。」
「私、そんなに無茶ばかりしてた?ノラン君?」
「ええ!」きっぱりと、ここだけは押さえないと。

「あなたに何かあったら、ガミラス一等臣民になれないじゃないですか!
…なんてのはもう、過ぎた話ですけども。あなたが他の人の心配を
するのと同じかそれ以上に、あなたを大事に思う奴等は貴女に何かあったら
生きてる心地がしないんです!自分がそうでしたから!!」
やばい、これ。本音が出てしまってる。こちらのひそかな狼狽にも
姫様、気づかれずに。

「心配、してくれてたんだ…。」ぽつり。もしかして、ようやく
分かってきださったのだろうか?
きつく言い過ぎたかな、とひそかに反省した矢先。
「そうですよ。ちゃんとおられるでしょ?姫様の一番大事な人が」
…馬鹿だ俺。何墓穴掘ってるんだ俺。折角姫様をものにできる
千載一隅の機会なのに。

「大事な人って、あ…!!」
「姫様!!」
いきなり、姫様が消えた。
たった今まで、自分の腕の中に居たはずなのに。

そして、どこからか聞こえてくる、おそらくは姫様を呼ぶ声。

そっか、あれが姫様の本当の「お名前」だったのか。
…知らなかった自分に勝ち目なくて当たり前、だったんだ。

3.
「やれやれ。『名前』を呼ばれたんだね、姫様は。それも
本物の『大事な人』に」
「べリス姐さん?皆?どうしてここに?!」

ノラン、背後からいきなり現れた元・同僚たちの姿に肝をつぶす。
「そりゃいるでしょう?死んだんだから。みんなであんたの話
しながら道中歩いてたら、現場に出くわしちゃった、って訳で。」
「で、例の姫様と奇跡の再会!今度こそ悲願達成か?!って
盛り上がっちゃってさ。成り行きをみんなで見守ってたわけ。
…ほら言ったろ、隊長?私が勝つって。」
「姐さん?あんた達人の恋路を賭けにしてたんですか?」
「当然でしょ。こんな面白い話、酒の肴にしないわけがない。」
「…あんたって人たちはもう。」

とは言いながらも、ノラン。その表情は決して暗くはなかった。
むしろ晴れ晴れとしている、と言った方がいいというか。
「貴女を心配してくれる大事な人。二度と悲しませちゃいけない
ですよ、姫様。」心の中でつぶやいてると。

「ねえみんな。今度生まれ変わるときは、家族がいいと思わない?
あたしが母さん代わりの姉ちゃんで、父さんに兄ちゃんに。」
べリス姐、いきなりの提案。
「じゃ俺は何なんですか、姐さん?」
「もちろん、末っ子!今度は赤ん坊のころからあんたをもっと
いい男に鍛えなおす!据え膳の一つも食えないようじゃ困るからね!」
「ちょっと、勝手に人のキャラを残念系に決めつけないください!」
「おーいいな、俺賛成、乗った!」「俺も!」「賛成!」
「本人の意志から先に尊重するべきでしょうが、全く!!」

とりとめのない、にぎやかな会話。本来ならば、こういう話しか
してなかったはずの。賑やかな連中。そうだ、みんな「家族」も同然
だった。じゃ今度こそ本当の家族もいいか。

「じゃ、ノランも無事合流できたし。あちらをめざそうか?」
「そうだな、思い残すことももうないしな。なあ、ノラン?」
「どうしていつも俺なんですか?!」と返しつつも。

お幸せに。言いそびれたけど、きっとなりますよね。

さあ、行くとするか。

     (終わり)

これでは生存ルートの二次が出来ないではないか?と反省しましたが;。
別腹にしよう、ということで。(おい)どう考えても守兄の大手柄な
例の件ですが、ノラン君も密かに力を貸してるよね、きっと。なお話でした。

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「ただそれは矜持と誇りのためだけに」

ザルツ特殊小隊442部隊の楽屋落ち話です。いろんなところで
「あの作戦自体無理すぎる」「要らん」等と言われてる;
「イスカンダル要人奪回(という名の拉致)作戦」の裏には
こんなやり取りがあってもおかしくなかったというか。

もしかしたら、単にべリス姐のオトコマエぶりと、
ノラン君が何故生き延びることになったのかが書きたい
だけかもしれない、と思いつつ。

「で、姐さんは本当にあの『綺麗な人』がイスカンダルの
ユリーシャ姫様と思っているわけ?」
「しっ!大きな声出すんじゃない!!物言う時には周りに
人がいないか気をつけろ、とあれほど言ってるじゃないか!!」

先ほど、メンバー全員を集めての「極秘任務伝令会議」の後。
最年少兵士であるノラン・オシェット伍長は自分より先輩の、
べリス・ライチェ隊員に、つい本音を漏らしてしまい、不注意を
窘められたところだった。

だが。
べリス自身も思うところがあったらしく、それ以上は後輩の落ち度を
責めず。それどころか、あたりを見回して人気のいないことを確かめると、
こちらへ来い、と彼に合図した上で。

「正直言って、あたしも怪しいと思ってる。」
とかなり小声で、彼に耳打ちしてきた。

「姐さん?!」
「また!本当にあんたは声が大きいんだから!!」
「ごめん…まさか姐さんまでが、俺と同じように思ってたなんて」
「あたしだけじゃない。恐らく他のみんなも…隊長も。」
「じゃあどうして?。」
「…断れると思うかい?『あたしたち』が。『二等臣民』である
『ザルツ特殊部隊』が?!」
「やっぱり…『汚れ仕事』なんだな…これも。」
「我々に振られた時点で確定、だろうが。」

普通に考えてみても、全うな理由があるのであれば、ガミラスと
イスカンダルの間柄である。正式な使者を立てて、外交筋を執るのが
正論である。
ではなくて、このように、純ガミラス人としては到底、
「関わりがあると思われるのは恥辱」とされる「任務」のために
「二等臣民・ザルツ民族」のみで構成される特殊部隊に「名指しで」
ふられてきた、ということは。

明らかに、流血を伴う、もしくはそれ以上の代償を要するということか。

「俺たちはガミラスに忠義を立てる覚悟があるからいいとしても。
この人がもし、姫ではなくて、他人の空似だったらどうするんだろう?
正義どころか、ザルツ全体の恥になりかねないかもしれないのに。」
ノラン、不安に思うことをつぶやく。

「最悪、そこまではいかないだろう。少なくとも、この『姫様』は
『テロンの悪魔の船』に乗っている時点で我々とは敵対関係になるの
だからな。…とはいうものの、ガミラスの思惑の『盾』にしていいかは
話は別、だが。」
どうやらべリスも、「姫若しくはよく似た他人」」については、
思いあぐねているところがあるらしい。

「かつてシュルツ指令の上司であったドメル将軍が、このために我々に
協力してくれと時間を割いてくださるんだ。恩義は返したい。」
「そう思うかい?ノラン。では我々には何が残る?この後に。」
ドメル将軍の名を出してきてまで、この
「一見筋は通ってそうだが実は下種な作戦」に意義を見出そうとした
「末っ子」に対して、姐は「あること」を問いかけることにした。

「正義も忠義も、ましてや恩義でさえも、どこまでが本当に正しいのか
分からないのだぞ?ノラン。お前にはどんな大義があるんだい?」

これだけ迷っているのだから、きっと答えに迷うだろう。
べリスはノランに対して、たかをくくっていた。

「やればできる子」彼女の、彼に対する評価であった。
「優しすぎるんだよ。これじゃ修羅場で生き残れない。」
今まで生き残ってきたのが不思議なくらい、「汚れ仕事」には
向いていない性格だった。その度に姐がフォローして、何とか
今に繋がってきたのだが。

「今度こそは覚悟しないと。」べリスが付け足そうとした、その時。

「姫様は、俺が護る。必ず護り通す。」

いつもはやや幼目で温和な後輩の表情が、いつになく厳しくなっていた。
「ノラン?」
「それが俺の、俺たちの、ザルツの矜持だから。」

「そうか…。ならば、安心だ。」
「え?何が?姐さん??」」
少なくとも、彼はずっと迷っていた。状況が変わるごとにひっくり返る
価値観や大義に対して、彼は常に懐疑的だった。ほかの隊員は
「そんなもの」と割り切って行動していたが、まだ若いゆえに純粋な
彼には、どうすればいいかが見えなかっただけだったのだろう。

民族の矜持。すべての行動規範。これさえ心に刻みつけてあれば、
迷わないだろう。後輩を見る姐の顔には、安どの表情が知らずのうちに
浮かんでいたのだった。

「さあ、食事の時間だ。食べておかないと。」
「姐さん、ミッション前だっていうのに、よく食欲なんか
湧きますね?俺なんか全然食欲ないですよ;」
神経質なところは相変わらずだな、と思いながらも。姐、
後輩に語ってみせる。

「食べられる時には何でも食べておくもんだ。食事も、チャンスも。」
後。…これは言わないでおくか。いずれわかるだろうしな。

おそらく、自分はその時にはこの世に居ないとは思うけど。
お前なら、大丈夫だ。

「姐さん、待ってくださいよー:」
姐のつぶやき。この時の彼には聞こえている由もなかった。

時に、作戦遂行直前の話。

   <終わり>

さてここから始まるかと思いますと。ではまた。

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「こころのねいろ」

今さらですが、進と雪さんの日常というか。でもこれ書いとかないと
先に進めないので書く、という感じです。

いつの間にか、「当たり前の光景」になっていた。

自分が非番の際、格納庫にあるコスモゼロの操縦席に潜り込んで、
兄の形見であるハーモニカを吹くときに、近くに

「彼女」がいる、

ということが。

そもそも、決してだたっぴろいとは言えない艦内の、格納庫。
人が沢山いる第一艦橋から結構離れていて、離着時に生じる
爆音対策として、かなりの防音対策がされているところ。
プライベートで音を出すのなら、まずここが一番無難ではないかと
思ったのが始まり。

それからそう時間が経たない間に、「彼女」にこの、
「秘密の場所」が嗅ぎつけられてしまった。そういえば小さいころ、
まだ地球が今のような悲惨な状況では無かった時代。大人の目に
付かない、ちょっとしたところを「秘密基地」に見立てて、友達と
遊んでたっけ。

どちらというと、今はその「秘密基地」めいた感じがすごくする。
もちろん、パートナーは男子の友人ではなく、「彼女」なのが
違うけど。

で、「彼女」が何をするのかと言えば。

自分がハーモニカを吹いてるときは、静かに、膝を抱えて丸まって
聴いてくれている。体の線が目立つことで定評のある、女子艦内服の
「彼女」のこの姿は、何気に
 
  猫の姿

を彷彿とさせた。手足のすんなり伸びた、毛並みの良い、賢くて
綺麗なシャムネコ。時々静かに伸び、をするのもますますらしい、
というか。

でもただ、それだけ。自分の勝手気ままな「演奏」をそんな風に聴いて
いるだけ。一体何が面白いんだろうか?

尋ねてみたら、意外な返事が返ってきた。

「古代君が考えてることが、すごくよく分かるから。」

彼女、すなわち森船務長答える。

「最初はただ聞いてただけなんだけど、何ていうか。積もり積もって
いきなり目の前が開けたというか。」
その時のハーモニカの音色で、「俺」の心情が「見える」のだそう。

「初めは音の高さとか長さとかだったけど。そのほかにも
説明しにくいんだけど、いろいろあって、
『今の古代君』が見える、かな。本当は、二人きりで話したいこと
とがあったんだけど、今はこっちかな。」

どうしよう。彼女には、嘘がつけないっていうことになる?

まあいいか。自分もその代わりに、「彼女」の可愛い姿を独り占め
してるわけだから。

                     (終わり)

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「かけられた願い達は、かなえられるのを待っている・2」


守兄の話が出てきたので、当然、あの人たちもあるはずだ、
ということで。

1.
「自分でも、こんな事を言うとは思わなかったな。」
展望室の、
「無限に広がる大宇宙」を映す窓を背に立てかけられた
『七夕飾り』を前にして、ひとりごちる技術長。
「あの時は、もとはと言えばあいつから、だった。」

2.
回想、技術長。
八年ほど前に遡る。梅雨のころ。あの日もいつものように、自分は
新見と研究室に籠っていたのだが。

「おーいるいる。真田―。これここに置かせてもらうからな。」
ばさり。ラボの戸を開けるや否や、たまたま置いてるものがなくて
空いていた部屋の空間に、このあたりにしては見事な『笹の葉』を
立てかける。

「守さん!いきなりやってきて、許可もなくこんなかさばる物、
置かないでください!貴方が好き勝手するのに空けてるんじゃ
ないんですから!」
「いーだろ、薫?別に未来永劫ここに置くわけじゃないんだし。
七月七日が終わったら、即効撤去するからさ。ここが一番、
いい場所なんだから、な?」
「七夕飾りなんて、今さら子供じゃあるまいし。」

「まあいいだろう?新見君。そんなに長い間じゃないんだから。
それにたまには年中行事するのもいいじゃないか?」
「先生がそうおっしゃられるなら…。本当、先生は守さんに
甘いんですから!」
親友と後輩~もしくは交際中の二人~の痴話げんかに『野暮』
ではあるが、仲裁をしたことになったのだが。

世間が何やら不穏な時期でもあったせいか、笹の瑞々しい緑と
金銀色とりどりの七夕飾りは、思いがけない位に心の平穏を
もたらしてくれることとなった。もちろん、それはこちらの都合も
顧みず、突然押しかけてきては、様々なアイテムの作成やら飾り付け
やらに巻き込んでくれる、人騒がせな親友に付き合わされる代償でも
あったのだが。

3.
「弟とな、毎年一緒に飾ってたんだよ。」
古代の弟。八歳違いの、まだあどけなさが残るあの子の
事か。
「俺がこっちに来てから、一緒に出来なくなったけどな。何ていうか、
何かしてないと落ち着かないっていうか。」
本当に、奴は弟思いだ。両親を一度に無くして以来、ますますというか。
あの新見君が、
「私と二人きりの時でも、しょっちゅう弟君の話するんですよ」と、
さすがに嫉妬を隠しきれなくなるのを聞くと。
そろそろ弟君も一人立ち出来る年頃になってきてるのだから、いい加減
「弟離れ」したらどうかと思ったりもしたのだが。

「なんて言うか、短冊に願い事を書いて飾る、っていうのが好きって
言うか。」
「今どき、『星に願いを』、ですか?守さん。このご時世、子供だって
しなくなってるのに。」
新見の言う通りであった。遊星爆弾の被害が世界規模で報告され始めて
居た頃。「星」は願いをかけるべき対象でなく、地上に災厄をもたらす
恐るべき存在に変わり果てていたのだから。

「星に、じゃないよ。いくら何でも、こちらは最前線要員だから、
それくらいは承知してる。大事なのは、『なりたい自分』を目標に
するのに、目に見える形で決意表明するってことかな。」
「それはどういうことかしら?守さん。」
「願い事は自分のためにする、ってことだよ。人生後悔しないように。」
「…本当、あなたには遠慮、ってものがない人なんだから。」

後悔しない人生。それはつまり、
「自分自身に正直に生きる」ということであったのだが。

その結果。奴は遠い冥王星星域で戦死。自分と新見は今こうやって
未知の惑星イスカンダルへ向かう艦に居る。自分は「メ号作戦」の
実態を知っておきながら、奴に伝えられなかった。

短くも、自分に正直な人生なのと、己を欺きながらも生きながらえるのと。
果たしてどちらが「後悔しない」か。

華やかな飾りと共に下げられている「短冊たち」を眺めながら。

それでも「答え」はまだ出ていない。

        <終わり>

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「かけられた願い達は、かなえられるのを待っている」

1.
「そろそろ七夕の頃ね、地球では。」

始まりは新見女史の何気ない一言だった。

「とはいっても、遊星爆弾落とされてからは、そんなこと思い出す
余裕すらなくなったけど。さすがに笹、というか竹の枝は艦内
では無理、としても、それなりの飾り、っていうのかな。短冊
飾れたりする、らしいのが食堂とかにあってもいいかな、って
思うんですよ。」

「笹の枝位ならオムシスで作れるだろうし、どうせなら展望台に
飾る方が『らしくて』いいんじゃないか?新見君。」

「あら、先生にしては珍しい発言ですね。艦内時間で当日には、
ランチのデザートに七夕ゼリー、とかあればもっと雰囲気出るん
ですけどね。」

技術班トップ2のとりとめのない会話のはず、だったのが。

「ということで、船務長?『七夕飾り』は如何かしら?」

いきなりふられて驚く。敢えてそれには構わずに、新見一尉。
「この間の赤道祭に続いて、今度も私から艦長に提案、ていうのも
ね。ちょっと続きすぎるから。森一尉から提案してくださると
嬉しいんだけど。」

「それは、構いませんが。」確かに、この中の誰が先導とるかを
考えてみると、やはりそのあたりに落ち着くような。しかし
船務長、それに伴う新たな問題に悩んでいると。新見一尉、
見透かしたように。

「心配しなくていいわ。こちらでデータは提供するから。」

2.
間もなく。「七夕」を目前にして、展望台にはそれなりに
立派な「笹の葉」が飾られたのだが。

窓の外に広がる、漆黒の空間に浮かぶ恒星達の光を背景に
浮かび上がる「笹の葉」は、おそらくは地上のそれよりも
遥かに大きな存在感を示していた。

「こんなものでいいのかな。…どこまで飾ればいいんだろう?」
森船務長。非番の合間を縫って、七夕飾りやら何やらを
コツコツと準備していたのだが。

普通なら、七夕飾り位どこかで見かけたり、自分たちで作ったり
を何回も繰り返し経験するのだが。

何せ彼女としては、慰問で訪れていた児童施設に、その時期に
飾られていたのをちらと見た程度の記憶しかない。しかも、地上では
あらゆる物資が貴重になってたので、こういった紙類でさえも例外
ではなく。実際のところ、何をどこまでしておけばいいのか、こうして
現物を前に悩むことが多くなってきていたのだった。

「折角これだけの材料揃えてもらえたんだから、全部飾ったら?
その方が無駄にならないし、みんな喜ぶから。」
「古代君?!」
いつの間にか、同じく非番中の戦術長が。
「いつからここに居てたの、というか、見てたの?」
「割と前から、って言ったらどうするかな?」
戦術長、しれっと答える。船務長が次の言葉を言う前に、再び
先に言葉を続ける。
「手伝うよ、森君。俺結構こういうの慣れてるから。」

3.
「本当、早いんだ。古代君、だけじゃなくて男性ってこういうの
あまり興味ないと思ってたけど。」
決して少なくない量の七夕飾りのほとんどが、古代の手によって
綺麗に作られ、配置良く飾られていった。

「俺たち兄弟、星とか宇宙とかに関係するもの全部、大好きだった
から。こうやって毎年飾ってたんだ、兄さんが士官学校に入学するまではね。」
「そうなんだ。…羨ましいな、こういうことひとつにも思い出があるって。」

自分には過去一年の記憶しかない。日常業務には不自由はないものの、
こういった季節の行事にまつわる諸々になると、雪。「備蓄の無い」自分が
辛くない、というのは全くの嘘ではなかった。

「あとは短冊、なんだけど。…こよりっていうのがどうしても
作れないの。」本当はこんなこと、言いたくない。改めて、
「過去の無い自分」を思い知らされるだけだから。でも、少しでも
この人と繋がれる「思い出」が出来るのなら。そんな思いでつぶやくと。

「こより、ね?簡単だよ。こうやって、薄い紙を細く切って、親指と
人差し指とでこうして撚っていくんだ。」
古代。器用に二本の指で、きりきりと「こより」を撚っていく。
「こういうのも、兄さんが教えてくれたな、そういえば。俺も
最初は上手く出来なくて。失敗する度に指導されて。上手く出来たら
褒めてくれたっけ。」

本当に、この人は「お兄さん」の話になると止まらない。というか。
聞いているこちらも、嬉しくなるというか。
「お兄さん、本当に大事なんだ。」
その度に、思い知る事実。こんな風に思ってもらえて、大切に
してもらえて。自分もこんな風に思ってもらえることがある、と
いいんだけど。船務長、心の中で。

「そういえば。短冊の願い事って、何を書けばいいのかしら?」
これも、迷ってる。この状況なら、地球を元に戻せますように
とか、イスカンダルに着きたいとか書くべきなのだろうけど。
悩める船務長に対して、戦術長。かく答える。

「自分がこうなりたい、と思うことを書けばいいと思うよ。
願いってのは、自分のためにするものだと思うから。」
そして、こうも付け足した。
「ここは宇宙空間だから、雨降らないし。星も近いから、
願いがすごくかなえられそうな気がする、って、おかしい
かな?」

「大丈夫、おかしくない。私も、そう思うから。」
雪、答える。思いがつながるのはうれしいから。

4.
時なくして。
展望室には見事な「七夕飾り」が飾られることに。もちろん、
「各個人で自由にお書きください」ということで集まった
クルーの面々による、「短冊飾り」も多数。その中には
当然、船務長の手によるものも。

「あの人が、私のことを好きになってくれますように。」

    <終わり>

七夕企画、ということで短編。良くある話ですが、
進と雪の日常ネタ、ということで。何気に守兄も
何やら見え隠れしてますが;恐るべし兄貴w。

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銀魂・ヤマト2199特別編・万事屋大マゼラン顛末記!

「いつの時代も真実は一つ、とは限らない。」

えと、始めての「2199」だけでなく、「銀魂」も初めて
だったりします;。第6章の感想を、銀さんが代弁してくれたら
な、というのがきっかけだと思う;。まさかここにきて
「2199」二次をするとは人生分からないものだと;
恐るべし「2199」。

1.
「銀さん!ちょっとこれ、どうなってます?何か大変なことに
なってますけど?」
「大変なのはいつものことだろ、新八い。悪いけど俺にも
分かんないんだわ!」
「何言ってるアルか、銀ちゃん!すべてはあんただろう―が!」

状況説明。歌舞伎町商店街売り出しセールの福引で、特賞の
「大マゼラン銀河観光ツアー三泊四日の旅」を見事?引き当てた
万事屋御一行様。さっそく乗った観光用宇宙船に、お約束?とも
言えるべき、「宇宙乱流に取り込まれるトラブル」発生。不測の事態に
パニック状態に陥りかけた機内を、いつものごとくいつもの皆さんが
鎮めたうえで、乗客や乗員全員を救助艇に乗せ、これで一安心、と
思ってたら。

自分たちが乗ること「だけ」を、思わず忘れていた、という;。

おかげで、激しく吹き荒れる「宇宙流」の渦中に、小川の笹舟のごとく
振り回される宇宙船内に取り残されてしまっていた。

「これ、どーにかなりませんか、銀さん!」
「知るか俺が!こんな時、からくりの親父がいれば何とか
なるんだが…。そうだ、コックピットに行けば何とかなるだろ。
ちょっと行って見てくるって…。おい神楽?お前何しよーと
してる?!」
「あ、銀ちゃん。とりあえず、片っ端からスイッチ押してるんだけど?」
神楽。分かんないけどまずはやってみよう精神、はいいのだが。いつでも
「越えてはいけない何か」があることを、この「夜兎」の娘の頭の中には
存在してないというのが玉に傷…どころではないな、この場合;。もはや
ヒビ入りまくって、本体割れる寸前、というか;。

「やめろ!神楽、それはワープスイッチだーーーーーー!!!!」
スイッチ、オン。船体の輪郭がぼやけて、背景に滲みこんでいく。
ワープ開始、である。この荒れ狂う宇宙流から逃れるに際して、
実はこれは最適の判断ではあったのだが。

「行先指定してないって!僕たちどーなるんですかーーーー!!」
新八の悲鳴、というか、ツッコミ。まさしく正論だが、この状況でも
やってしまう、パブロフ的反応はもはや伝統芸、ともいうべきか。
「折角の大マゼラン銀河旅行だったのにー!小さいころからあこがれてた
イスカンダルとガミラスがあるところなのにー!」
どうやらこの「御江戸世界」にも、「宇宙戦艦ヤマト」という「物語」は
存在しているらしい。で新八もご多分にもれず、小さい頃
「夢中になった」口のだろう。もちろんそれは銀時も同じなはずであり。
…異星人の「夜兎」の娘である神楽は別にして。

どれだけの時間が経ったのか。宇宙船は、ある惑星に不時着していた。
最大の窮地は脱したらしいのだが、また別の窮地に落ちていた、
というか。

惑星レプタポーダ。ガミラス星第十七番収容惑星。例えるなら
日本の江戸時代の「八丈島」「佐渡島」にあたるだろうか。
折しも、この辺境の惑星では、「収容施設」として使われて以来
最大級の「反乱分子による暴動」の真っ最中だった。

「何だこれ、どーなってんだ?これじゃ、ワープ成功しました、
なんていえねーじゃねーか?つかむしろ、もっとやばくなってじゃね?
みたいな??周り観ろよー、なんか怖ーいお兄さんたちがやりあってるぜ!」
銀さん、周りを確認したのち、つぶやく。

「銀さん何余裕ぶっかましてるんですか!普通に危険でしょこれ!
武器持って走りまくってるの、天人しかいないんですけど!」
新八、ツッコミはこの状況でもエッヂがきく。

「とりあえず、逃げるネ。安全なところに隠れるアル。」
神楽、言葉だけ聞いていれば至極まともなこと言ってるように聞こえるが。

「神楽ちゃん、何やってんのあんたは!」新八、驚く。
「だって、向こうから襲ってくるの、叩き落としてるだけアル!」
切っては投げ、ちぎっては投げ。有無を言わさずなだれ込んでくる
「天人」の暴徒の群れに対して、このチャイナ娘は律儀にも、
一人残さず文字通り、「薙ぎ払って」いたのである。

「おい神楽―!そんなの真面目に相手してたら、いくつ体あっても
足りねーぞ!まずは逃げるぞ…って?おいどーした?神楽!!」
「神楽ちゃん?どーしたの、いきなり倒れて!!
今まで文字通りの「無双ぶり」を見せつけてきたはずの夜兎娘。
何人かをまとめて投げ倒した後。

いきなり倒れた。車で言うと「ガス欠」。
「お腹すいたアルね…。あれから何にも食べてないアルし。」
新八、相方をかばいに。いくら地球人スペックで
怪力無双とはいえ、見た目はまだまだ年端もいかない「女の子」で
ある。まずは襲いかかる「敵」を相手にしていた銀時を尻目に
動いたところ。

ほんのわずかに生じた「隙」。新八、そこを突かれた。
「この、ザルツ野郎がああああっ!!」
顔色が緑色の天人。ガトランティス出身とされてるものらしく。

「新八!神楽!!」
どうやらこの囚人、銀さん達万事屋チームを「ザルツ」とか
言う「連中」と間違えたらしい。倒れた神楽を庇った新八に
鈍器で襲いかかろうとする暴徒に、さすがの銀さんも間に合わないか、
と思った、その時。

ぴしいいいいいいっっっ!!
右から左へ走る、一陣の光線。暴徒、利き手を撃たれ、獲物を
落とす。
「早く逃げろ!こっちだ!!」
聞き覚えのある「江戸の言葉」いや「日本語」のその主は。

「…古代進?!どうしてこんなところに?!」
目の前に、あの「宇宙戦艦ヤマト」の「戦闘班班長」がコスモガンを
構えて立っていた。しかも、その隣には、
「見慣れない華やかで煌びやかな、でも露出多めの」スーツを着た
「森雪」…じやない;。一見間違えかけたが、雰囲気が違いすぎる、
「見かけたことない新キャラ」さんがいた。

 万事屋三人、思わずユニゾンで叫ぶ。
「こんなキャラ、知らねえええええーーーー!!」

2.
「ということは、僕たちが知らない間に、古代さん達を助けて
いた、ということになるんですね?」
新八、さっそく結論を取りまとめる。

万事屋組が大乱闘していたのは、たまたま艦内から
「イスカンダル第3皇女ユリーシャ姫」と間違えられて
拉致された船務長・森雪を奪還せんと偵察艇・シーガルで
乗り込んできた戦術長・古代進(と潜り込んできた
ユリーシャ姫)が、一時捕縛されたものの、辛くも
脱出行を果たしていた、その最中であった、ということ。

多数の「囚人」たちが「暴徒」と化す修羅場の中、万事屋たちの
「訳は分からないけどまずは血路を開いて逃げた」おかげで、
古代達の、シーガルへの帰途も開けていた結果になっていたらしく。

(実は営巣から脱出してシーガルコックピットに、伊東と二人で
潜り込んでいた藪に)コックピットを打ち抜かれ、操縦不能に
なっていたのを、銀さん達が乗っていた「観光艦」からパーツを
いいとこどりして組み込み、残りは「艦内」で修理する、
とこれまた、「きた艦」ごと「ヤマト」に乗ることになった
三人。しばらくは修理が終わるまで、艦内に「客人」として
迎えられることとなった。

「いやー、やっぱり何かしてみるもんだなー;。ヤマトだぜ、
ヤマト!あの有名な『宇宙戦艦ヤマト』に招いてもらって、
しかも、『大マゼランパフェ』?こーんな美味しいものまで
頂いちゃってえw。あ、次は大盛りで!」

窮地を救ってくれた恩人、として沖田艦長はじめ第一艦橋要人
メンバーが同席。そこにお茶とお菓子として出されたのがかの
「大マゼランパフェ」なのだが。

3人のうちの二人。銀髪天然パーマの遊び人風若い男と、
チャイナ風の服を着た、これまたチャイナ風少女が、
とにかく、食べる、食べる。
「いや、銀さん、神楽ちゃん。食べるのちょっと控えてよ。
…いくらお腹が空いてたからって、失礼でしょ。ここ
喫茶店じゃないんですよ。あの!ヤマトの第一艦橋内で、
沖田艦長だっていらっしゃるんだから!」
新八にしては控えめなツッコミ。だからというのは何だが。

「新八!何言ってるアルか!食えるうちに食っとくのは当たり前
だろうが!!」
神楽、瞬速で言い返す。
「いや、その通りだ。なかなか面白いな、気に入ったぞ。お前。」
「え、誰、今の。…えーーーっ!!!青い肌、って、ガミラスのお姉さんが
こんなところにいる――――!!ヤマトなのにーーーー!!」
実は神楽の破天荒ぶりに興味を持った、同じくガミラスからの客人・
メルダが口をはさんだのであったが。

新八の叫び。そりゃそーだ。「旧作」にはそんなキャラ、いなかったし。
彼が「現実」に戸惑っている中、銀さんが核心を問う。

「そういえば、生活班の、否、船務長の森雪さんはどこにいらっしゃるん
ですかね?まさか、そちらのせくしいーなコスプレをなさってる」

びしいいいっ!電撃が飛ぶ。彼女的に不愉快な物言いが続いたため。
ユリーシャ姫が思い余って「電撃」をお見舞いしたのだった。
「はてな?私はイスカンダル第3皇女、ユリーシャ。雪、じゃない。」
「イスカンダル?嘘つけ!!ラムちゃんの間違いだろーが!!」
宇宙から来た電撃美少女と言えば、虎縞ビキニの鬼娘。
いまその「常識」さえ覆されようとしている。

「一体どうなってるんだ?俺たちの知ってる『ヤマト』がどんどん
『知らないヤマト』になってるんですけどー?」
銀さん、倒れる。でも心の中でツッコミを忘れずに。

3.
艦内に泊めてもらってる間。ただ飯食うわけにはいかないと万事屋
三人、出来得る限りのことを手伝うようになっていた。様々なアクシデントに
見舞われた後で、文字通り「猫の手も借りたい」状況であったのと、
3人の人柄や、仕事のスキルも相まって、いつしか艦内の雰囲気に
馴染むようになっていた。そして、口コミで様々な「事情」も。

「戦術長は、船務長救助を拒否ったって。」
「目的地を目前にして、乗務員一人の命よりも
コスモリバース確保を優先すべきだから、だとか。」
「何それ!もしかして公私混同しないための配慮とか?
逆でしょ、それ。戦術長のほうが船務長を個人所有してない?」
「『オレノオンナダカラテヲダスナ』ってことかしらね。表向き
そっけなくしてたけど、所詮船の中だもん、みんな知ってたって、
あの二人のことは。」
「よねー。最初は私も戦術長狙いだったけど。格が違うって
言うか、レベルが違う、っていうか。」
「あでも、まだ諦めてないメンバーもいるでしょ?ほら、
ガミラスのメルダさんとか、船務長と入れ替わりにキマシタワ―
なイスカンダルのユリーシャ姫様とか。航空科の山本さんも、
篠原さんと懇ろっぽくなってたけど、ここにきてまた戦術長
狙いとか。」
「えー贅沢。だって航空科って、ちょっとやんちゃっぽいけど
結構イケメンぞろいなのにー;。」
「あそうそう、航海長忘れてるわよ。ちゃんと見てる?」
「そういえば、ガミラス本星からの映像見た?ホント、そっくりよね、
森船務長。美人は何着ても似合うけど。どちらが本当のお姫様か
分から無い位よね。」
「いきなり侵入者に、でしょ。セキュリティ、怖いよね。」

「あーすいません、クルーの御嬢さんたち。艦艇掃除何で、
ちょっとそこ通してもらいますよー。」
交代要員の女子クルーたちのさんざめない御喋りを制するかの
ように銀さん、掃除道具を抱え込んで走る。
「ほんとにどいつもこいつも…お前らの口のセキュリティーのほうが
よっぽど心配だっての!」

目指すは、例の「立ち入り禁止区域」。
「またあいつ、いるんだろうな…あの場所に。戦術長さんよ。」

4.
艦艇底部にある、外部ハッチ。手が回りきれてないせいか、
事件当時のままの様子で、未だに「立ち入り禁止」を意味する
黄色いロープで「封印」されている。

古代戦術長。勤務時間が終わると、だれにも見つからないように、
ほぼ毎日ここにきて、壊れたハッチを眺めている。
正確には、「壊れたハッチの、その向こうに広がる宇宙空間」
なのだろうが。

一番安全と思われた、本艦から、まさか侵入されての拉致。
そしてあの、雌雄を決した「七色星団決戦」のほうが「陽動」で、
「ユリーシャ姫(と思われる人物)の奪還」が「本命」だった、
という。

手を伸ばせば、届くだろうか。伸ばしてみても。
届かない。何もつかめない。つかめるのは
自分の拳だけ。

…思い余って、拳を壁に叩き付ける。
「ユキいいいいいいいっ!」
ガシン。鈍い音だけが、静寂の中に響くだけ、だったのが。

「…毎日ご苦労さんなこったな、古代戦術長さんよお。」
「見ていたのか!坂田さん!!」
「ああ、ここ毎日、ずっとな。掃除しようと思ったら、あんたが
いつも先に来て叫んで壁ドンするもんだから、ずっと待ってただけ、
なんだけどな。」
「ここは関係者以外立ち入り禁止区域だ。掃除の範囲でも
無かったはずだが?」

古代、明らかに動揺。そりゃそうだ。誰も来るはずがない、
見られてるはずのない片隅に、自分と同じ来訪者がいて、
しかもずっとやること見られていたのだから。
「いや、立派な掃除範囲だよ。あんたの心の中のな。
古代戦術長殿?」
「坂田さん…あんた一体何者だ?何の権限があってこんなことを。」
「何者って、ただの万事屋さ。ただあんまり気になったもんだからさ。」

銀時、構わずに話を続ける。
「古代さんよ。あんた、雪さん救出作戦拒否ったんだって?それなのに、
こんなところで毎日叫んで壁殴って大事な拳痛めつけてるって、
どうなんだよ?プロの軍人として失格じゃねーのかい?」

古代、答える。
「当たり前だろ?我々の任務はコスモリバースシステムを一刻も
早く、地球に送り届けることだ。今まででも大勢仲間が犠牲になった。
今雪一人敵地から救い出すのに、時間と人手を回してる余裕はない。
それは雪だって、この艦に乗った、最初のときから分かってる。
だから」
 
「だから?女一人敵地に置き去りにして、代わりに自分たちは
さっさと地球に引き上げるっていうのか?それがお前たちの
正義っていうもんかい?」
「一刻を争ってるんだ!もう迷ってる時間はない!目的地は
間近に迫ってる、今この時を無駄にするわけにはいかないんだ!!」

「古代、お前それ本気で言ってるのか?だとしたら。

お前は戦術長としても、一人の男としても失格だな!!」

「何だって…!」
銀時の言葉に、古代。…一言も言い返せない。

5.
「考えてもみろ。今やり過ごしても、いずれ奴らは追いかけてくる。
後方の憂いを断つ、という意味でも、ここで本陣潰しておくのが
先決ってもんじゃねーのかい?急いで帰ったところで待ち伏せされて、
故郷目の前にして木端微塵にされたら、何してるこっちゃわからねーじゃ
ねーかよ、戦術長さん!」
 
「……。」
古代、銀時を正面から無言で睨みつけている。いや、それしか
出来ない、と言った方が正しいのだろう。

「それにだな。お前さん、雪さんを自分だけのもの、と思っちゃいねーかい?
雪さんはな、この艦のみんなにとっても、大事な人だってことを。」
「今さら、何当たり前のことを言ってるんだあんたは!」
古代、図星を刺されて思わず声を荒げる。
「いーや、思ってねーよ。そろそろ飽きてきたおもちゃの始末に
困った矢先に、都合よくラスボスさんが浚って行ってくれてラッキー、
何も知らずに人のお下がり見せびらかして喜んでるとか。」

「…いい加減にしろ!!」
ばきっ!
古代の拳が、見事に銀時の左顔面めがけてヒットした。

はず

だったのだが。

「やるじゃねーか?これでこそ『ヤマトの古代進』だ。でも、
拳…相当痛んでるぜ。これじゃいざって時に使えねーぜ、
全くよ。」

拳は銀時の顔の前で寸止めされていた。こうして改めて見ると、
それは連日の殴打で痣が広がっていた。
「気づかなかった…。」
古代、改めて。

「分かってくれたらいいぜ。侮辱したこと、すまなかった。
どうしてもお前さんの本気、確かめたかったから、だけどな。」
銀時、続ける。
「雪さんがみんなのことをどう思ってたか、当然知ってるだろ?」
「ああ、いつも言ってたよ。『この艦のみんなが家族』って」
「だから、そういうことなんだよ!」
「…え?」

「ガミラスからの映像だけどな、こないだちらっと見たんだけどな。
…いい顔してるじゃねーか、雪さん。一人ぼっちの囚われのお姫様
かと思いきや、正々堂々『一国の姫君』やってるし。これがどういう
事か、分からないあんたじゃあるまい?」

古代、あるところに思いつく。
「まさか、雪。あいつ…!!」
「そうだよ、やっぱりあんたたちだな!雪さん、たった一人で
敵の懐に切り込んでるんだよ!大事な『家族』を守るために、
自分ができることで!そんな仲間に加勢するのが人の義理、って
もんじゃないのかい?!じゃどーすりゃいいのか、分からないあんたじゃ
ないだろう?!」

「坂本…いや、銀さん!何で今まで気づかなかったんだ、俺は!」
銀時、古代の肩をポン、と叩き、すれ違いざまにつぶやく。

「さ~、そうと決まったらまずはさっさと動こうぜ。こう見えても
俺たちゃあんたらよりは『天人』との場数だけはかなり踏んでる
からな。いろいろしてもらったお返し、させてもらうぜ。」
「もしかして、あれ全部、あんたたちが?!」

古代、何故気づかなかったかと。あの時、自分たちが逃走する
先々に『無駄に』暴徒が居なかった理由に。確かに、銀時たちを
襲おうとしたのは

 数人

しかいなかった。…その代り、周りには、撃ち果てた連中の山が累々と。

古代、振り返るが銀時、気にも留めずに「作業」に入る。

「あ、マゼランパフェだけはまたよろしく頼むぜ。あれけた違いに
上手いからな!」
  
      
                      <終>

やっと終わりました。第六章での言いたいことを銀時さんに代弁
してもらう、というのはどうにかなったかと。でもこの続きを
何とかしたいな、という気もあるので、最終章上映までには
あげたいな、と。

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