時系列的には「生き返り」直前ですが、ノラ雪です;。一応
「雪さんてこんな人」とある程度設定固めてます。まあこんなことも
ありかと思いつつ。
しかしなー;自分で書いてて何ですが、2199雪さんは、
古代さんよりノラン君選ぶ方がしあわせになれるんじゃね?と
つくづく思ってしまうのは邪道でしょうか;。
(汗)
1.
「何で『姫様』がこんなところに居るんだよ!?」
彼は目の前にいる、『彼女』の姿を見て驚いた。
ノラン・ロシェット。元・ザルツ人にしてイスカンダル要人護衛兵
だったもの。第二バレラス破壊時に、自らの身体と生命を、
「ユリーシャ姫」の身辺の安全と引き換えた。それゆえに、現在。
こうして、「某所」を一人歩いているはず、だった。惑星「テロン」の
某国あたりでは昔から、「黄泉平坂」とも言われているような場所を。
「彼女」は、純白だが飾り気のないロングドレスを着て、そこにいた。
彼が知っている「彼女」は、身体の線が極限まで露わになった黄色いテロンの服、
もしくはイスカンダル風のロングドレス。
あるいは、最後に見た、ガミラス軍の宇宙服の姿だけだったのだが。
そのいずれでもなかった。
純白のドレスと言えば、民族的には婚礼衣装が多いのだが、死出の旅の
装束なところもないわけではない。そして、「彼女」のものはと言えば。
明らかに後者寄りであった。
「…姫様!なぜあなたがこのようなところを、こんな格好でいらっしゃるの
ですか?!」ノラン、思わず声をかけて近寄った。
「ノラン君?…ノラン君なのね?!また会えるなんて!」
「あなたはここに居るべき人ではないはずなのに、いったいどうなさった
のですか?」
あの時、確かに二人とも生き延びられる確率はゼロに近かった。しかし
ノランはどうしても彼女に「生きて」欲しくて、
彼女を「外」へ突き落した、のだった。そして、身代わりになった自分が
「死んだ」はずだったのに。
「…セレステラ、見かけなかった?私、彼女を追いかけてたはず
だったのに、いつの間にかこんなところに来てしまって…。」
気丈な「姫様」も、流石に今回ばかりはしょげている。それどころか、今にも泣きだし
そうではないか?一体何があったんだ?本当にこの人は、目を離したら!
…いや今はそんなことを言ってる場合ではない。どう考えても、深刻かつ
重大な事件が起きたとしか。
「セレステラ?あの、総統閣下御付だった、ジレルの魔女と言われた人ですね?
何があったのか、教えてくださいませんか、姫様?」
2.
ああ、やってしまった。折角繋いだ「命」だったのに。いずれこうなって
しまうかもしれない、とは気づいていたから、自分はそうならないよう、
いつでも「命がいくつあっても足りない」状況に陥る羽目となっていた。
姫様。この方はあまりにも、人のために後先構わず頑張りすぎる。
収容惑星のときでも、自分を庇うあまりに、博打勝負に出てしまったし。
たまたまあそこの所長が俗物中の俗物で、「イスカンダル」がどのような
方々か知る由もなかったから良かったものの。
本当の「イスカンダル」様は、決してあんなことはなされない。見るものが
観れば、一発で「偽物」とばれてしまい、次元潜航艇一味もろとも詐欺の罪
などで逮捕されてもおかしくなかったところだった。
そのほかにも、おそらくは自分を気遣ってくれたのだろう、何気ない会話の
つもりで、
「綺麗な月ね。」などと、言わなくてもいい一言をおっしゃられたり。
夜空に浮かぶ青い星、イスカンダル。そこで生まれたお方が故郷を
知らないはずがない。あの時も自分と二人だけだから良かったものの。
それ以来、自分が姫様を護っていたのは決して長い時間ではなかったに
せよ、万が一、真実が明るみになった時のことを考えると、ずっと生きた心地が
しなかった。
そういえば、そうだったな。今はもう「生きて」いないのに、今のほうが
ずっと楽なのは、そういうことだったか。
「姫様は、また悪い癖が出てしまいましたね。人のために頑張りすぎる
癖が。」生前ならば、こんな説教じみた物言いは出来なかった、はずである。
「悪い癖?私が?」姫様、あっけにとられる。
「どうして?セレステラは自殺なんかすることなかったのよ?折角
大好きな人と再会できたのに、大切に思われてないはずなんてなかった
のに!死んでしまったらお終いじゃないの!だから私は!」
かなり強い口調。さっきよりもっと涙声になっておられる。こっちが
泣きたいくらいなのに。
「あなたが巻き添えで亡くなってしまったら、それこそ何してること
じゃありませんか?姫様。」
「え?!私、死んじゃってるの?」
「…気づかれるの、遅いです。ここは『この世』と『あの世』を繋ぐ
場所ですよ?」
「セレステラ…間にあわなかったんだ…。」
どうしよう。とうとう泣き崩れてしまわれた。どうすりゃいいんだ。
というより、どうして自分のことよりも、魔女のことを先に心配できるんだ、
この人は。それよりも。
姫様、自分にしがみついてしまってる。この調子じゃ、しばらく泣き止みそうも
なさそうだけど。
自分的には、ものすごく美味しい状況…なのかな、これ。姫様には申し訳
ないけど、今自分、すごく嬉しい。こんなに頼られてるなんて。
こんな近くで、姫様の顔、初めて観る。本当に、泣いてる顔も綺麗だな、この方は。
もうしばらく、このままでもいいかな。どうせ急いでる訳じゃないし。
落ち着かれるまで待とうか。
「ジレルの魔女は。」
どれくらい経っただろうか。姫様が泣き疲れて大人しくなった頃を見計らって
声をかけてみた。
「聞いた話で確かではないですが、身体は滅んでも魂は永遠に生きられるんだそう
です。だから何れまた新しい身体でこの世に現れることが出来るそうですから。
セレステラさんも。」
「どこかで会えるかしら?私もっとあの人と話をしたかったから。」
「ええ、会えますよ、きっと。」
自分が貴女とまた、巡り会えたようにね、と心の中でつぶやきながら。
「やっと…笑ってくださいましたね。安心しましたよ。」
「でも、人のためとはいえ、無茶ばかりしないでください。少しは心配
かけられる方のことも考えて下さらないと。」
「私、そんなに無茶ばかりしてた?ノラン君?」
「ええ!」きっぱりと、ここだけは押さえないと。
「あなたに何かあったら、ガミラス一等臣民になれないじゃないですか!
…なんてのはもう、過ぎた話ですけども。あなたが他の人の心配を
するのと同じかそれ以上に、あなたを大事に思う奴等は貴女に何かあったら
生きてる心地がしないんです!自分がそうでしたから!!」
やばい、これ。本音が出てしまってる。こちらのひそかな狼狽にも
姫様、気づかれずに。
「心配、してくれてたんだ…。」ぽつり。もしかして、ようやく
分かってきださったのだろうか?
きつく言い過ぎたかな、とひそかに反省した矢先。
「そうですよ。ちゃんとおられるでしょ?姫様の一番大事な人が」
…馬鹿だ俺。何墓穴掘ってるんだ俺。折角姫様をものにできる
千載一隅の機会なのに。
「大事な人って、あ…!!」
「姫様!!」
いきなり、姫様が消えた。
たった今まで、自分の腕の中に居たはずなのに。
そして、どこからか聞こえてくる、おそらくは姫様を呼ぶ声。
そっか、あれが姫様の本当の「お名前」だったのか。
…知らなかった自分に勝ち目なくて当たり前、だったんだ。
3.
「やれやれ。『名前』を呼ばれたんだね、姫様は。それも
本物の『大事な人』に」
「べリス姐さん?皆?どうしてここに?!」
ノラン、背後からいきなり現れた元・同僚たちの姿に肝をつぶす。
「そりゃいるでしょう?死んだんだから。みんなであんたの話
しながら道中歩いてたら、現場に出くわしちゃった、って訳で。」
「で、例の姫様と奇跡の再会!今度こそ悲願達成か?!って
盛り上がっちゃってさ。成り行きをみんなで見守ってたわけ。
…ほら言ったろ、隊長?私が勝つって。」
「姐さん?あんた達人の恋路を賭けにしてたんですか?」
「当然でしょ。こんな面白い話、酒の肴にしないわけがない。」
「…あんたって人たちはもう。」
とは言いながらも、ノラン。その表情は決して暗くはなかった。
むしろ晴れ晴れとしている、と言った方がいいというか。
「貴女を心配してくれる大事な人。二度と悲しませちゃいけない
ですよ、姫様。」心の中でつぶやいてると。
「ねえみんな。今度生まれ変わるときは、家族がいいと思わない?
あたしが母さん代わりの姉ちゃんで、父さんに兄ちゃんに。」
べリス姐、いきなりの提案。
「じゃ俺は何なんですか、姐さん?」
「もちろん、末っ子!今度は赤ん坊のころからあんたをもっと
いい男に鍛えなおす!据え膳の一つも食えないようじゃ困るからね!」
「ちょっと、勝手に人のキャラを残念系に決めつけないください!」
「おーいいな、俺賛成、乗った!」「俺も!」「賛成!」
「本人の意志から先に尊重するべきでしょうが、全く!!」
とりとめのない、にぎやかな会話。本来ならば、こういう話しか
してなかったはずの。賑やかな連中。そうだ、みんな「家族」も同然
だった。じゃ今度こそ本当の家族もいいか。
「じゃ、ノランも無事合流できたし。あちらをめざそうか?」
「そうだな、思い残すことももうないしな。なあ、ノラン?」
「どうしていつも俺なんですか?!」と返しつつも。
お幸せに。言いそびれたけど、きっとなりますよね。
さあ、行くとするか。
(終わり)
これでは生存ルートの二次が出来ないではないか?と反省しましたが;。
別腹にしよう、ということで。(おい)どう考えても守兄の大手柄な
例の件ですが、ノラン君も密かに力を貸してるよね、きっと。なお話でした。
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