「宙に輝け、満開の花」#21.
「嵐の前の夕凪・2」
松崎凪。花咲や雪城と同期の新人。たまたまこの二人とは
違ってパイロット養成チーム所属なため、霧野嬢は彼女と
直接顔を合わす機会がなかっただけ、だったのだが。
「凪ちゃん、お帰り!」先に彼女に声をかけたのは、
食堂で姿を見かけた花咲だった。
「花咲?お久しぶり!元気してる?ここ暫く顔合わせ
られなかったけど。…この様子なら、大丈夫みたいだな。」
「凪ちゃんこそ、元気でよかった。私達と違って、パイロット
養成はかなりきつい、って聞いてたから。」
「最初はね。でもなりたくてなったんだから、そんなこと
言ってるほうがおかしいしね。お陰さまで少しは慣れたから。」
同期二人の会話。久しぶりの邂逅なのだから、話が弾むのは
当たり前。分かってはいるのだが。
同じ部署の「先輩」である自分を差し置いて、すっかり同期の
「彼女」との再会に夢中になっている花咲に、イラつきを覚えて
しまう霧野嬢だった。そんな時。
「あ、凪ちゃんだ!お久しぶりです。」
技術部の雪城穂波も、時分時で食堂にやってきたところに、
久しぶりに顔を見た同期生にねぎらいの声をかけた。
「穂波じゃない?ご無沙汰しててすまない。そっちは大変
だったって?」
例の「ハッキング事件」である。恐らくは教官である秀人からの
情報だろう。勿論、教え子にそんな話を「堂々と」するわけは
ないから、「それとなく」と思われるが。
「え、もう知れてるの、そちらまで。…えーと、何とかしなきゃ、
しか考えてなかったから、あの時は。」
その時である。背後から、野太い男性の声が。
「凪?凪じゃねーかよ!どうだ、そっちは?」
「伴太兄貴!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「そうでしたか。凪ちゃんと伴太さんは昔からの
お知り合い、だったんですね。」穂波、事情を飲み込む。
「知り合い、というか、こいつら兄妹とは、ガキン時から
つるんでたんだよな、凪?」伴太、他部署の後輩に同意を
求める。
「伴太兄貴とうちの兄貴が先に『こっち』に来たから、
あたしも早く来たくて。やっと入れて貰えたって言うか。」
「あー!凪お姉ちゃんだ!」
畳み掛けるように、甲高い声が被さる。
「ミヨコじゃないか!こっち帰ってたんだな!って、
学校、サボらずに行ってるか?また伴太兄貴に
くっついて回って!邪魔したら駄目だぞ!ここは皆が
「仕事」してるところなんだから!」
「…判ってるよ、もう。凪お姉ちゃん、昔から厳しいん
だから。」
「昔から、男衆は皆、お前を甘やかすからな。たまには
きつい事言うのが居て、丁度良いんだよ。」
もう、という表情のミヨコを観て笑う「凪」の姿を尻目に。
霧野嬢。かつて味わったことのない「疎外感」にいきなり
襲われていた。
ここに居る、「自分以外」が全て「凪」という新人と
繋がりがある、という事実。
「偶然よ。唯の。…こんなこと気にするほうがおかしい
んだから。」取り越し苦労を気にかけることはない、と
霧野嬢、必死に心の中で己に言い聞かせていたら。
「凪、遅いと思ってたら、こんなところで油売ってたのか。」
彼女の「教官」である、秀人がやって来た。
「パイロットは、特に遅刻厳禁なの、判ってるだろうが?
…さすがに、この面子が一同に会したらやばいかも知れんが。」
同期だけでなく、上司連中までもが居る。
「すいません、秀人先輩。すぐに戻りますから。」
霧野嬢、このやり取りの横で。
「秀人君は、彼女を教える立場だから、当たり前よね。」
自分よりも先に、「凪」に声をかけてきた「戦友」に
対して、新たに苛立ちを覚えてきた、その時。
「お前達、ここに居たのか?…って、どうして全員集まって
るんだ?」
今回の計画の事実上の責任者である、一文字タクマ降臨、
満を持して。…もしかしたら、このタイミングだけは外すべき、
だったのかもしれないが。
「松崎凪、だったな?話は秀人から聞いていると思うが。
…さっさと持ち場に着くように。」
「すいません。了解しました。一文字先輩。」
「だから、タクマも責任あるんだから、当たり前なの、
当たり前なんだから、当たり前なんだから、当たり前、
なんだから…。」
あたしはここ。あの子ばかり、観ないで。自分一人だけが
取り残された、と思いたくない。霧野嬢、心の中で必死に襲い来る
現状に抗っていた、その時。
「貴方が、霧野リサ先輩ですよね?オペレータの。」
凪。通りすがりに、霧野嬢の耳元で、彼女にしかわからない
位小さな声で、囁いた。
「え?」突然の問いかけに、思わずその場に立ち尽くす
霧野嬢だった。
<2・了>
今回は多少長くなりました;。ではまた。
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コメント
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こんにちは(^0^)/
今回は全くリサが、ほとんど孤立してる……(一人だけが取り残されていると思いたくない)(私だけを観て)→タクマの気持ちも知らないくせにねー;やっぱりどこかにお姫様なところが残ってて、で、これ、もし逆の立場で、花咲ならもっとポジティブな自分に持っていくだろーな。
まっ、リサにはいい勉強だ
凪の(あなたが霧野先輩ですね)→なんせ嵐の前の夕凪なんだから、これは挑戦状のご挨拶?
エース2人がいて、伴太までいて、この雰囲気;
トニーがいたら良かったのにね♪おしかったねーリサ。
投稿: GO!GO! | 2012年9月15日 (土) 09時34分
こんにちわ。コメ有難うございます。
>今回は全くリサが、ほとんど孤立してる
全くそのとおりです。お嬢には今回、思い切り「ハブられて」もらいました。(おい)今後のために…どんだけ話作り単純なんだw。
>花咲ならもっとポジティブな自分に
自分もそう思います。「何があっても『こころの花』が枯れない」ことで有名な彼女ですがw、やはり女子達の中でケンを競ってきただけのことはあるかな、とも。
>まっ、リサにはいい勉強だ
全てはここにつきますね。
>トニーがいたら良かったのにね♪
まるっと同意、です。一人「ハミゴ」状態の姫君に、
「どうしたんだ?そんなところに一人で」と声をかけるナイト様。あーイケメン度が更に上がるのが目に見えるwww。つか、最大のチャンス到来っつーか。
ではまた。
投稿: 由維 | 2012年9月15日 (土) 13時56分