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「宙に輝け、満開の花」#15.5.

「月満夜の小夜啼鳥」

8月といえばお盆。『真夏の夜の夢』がテーマなのですが、
さて。本筋からやや離れたエピだったりします。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「こんばんわ。お招きに預かります。って、本当に
よろしかったんですか?こんな夜遅くに」
「良いのよ。こちらこそ、明日お盆休みで久しぶりに
実家に帰るので忙しいところ来てもらって。」

いかに第十番惑星に移民する時代ではあっても、
第三惑星地球に存在する日本国では、ほとんどのところで
「お盆休み」を取っている。先達メンバーはともかく、
新人組のほとんどは「実家」があるため、わずかな期間では
あるが帰省するものがほとんどである中で。

「霧野先輩は良いんですか?他の男の先輩方はもとより、
ご家族いらっしゃる、と伺ってますが。」
後輩の花咲。先輩にあたる霧野嬢から、
「忙しいところ、もし良ければ」帰省する前の夜、自分の
部屋で茶飲み話でもしていかないか、とお誘いが。
 
「憧れの先輩」からのお誘いである。二つ返事で受けた
花咲。手土産にお茶菓子などを持参して、霧野嬢の個室に
初めて訪れた次第であり。

「良いのよ。こっちの方が、居心地いいの。」
笑顔で切り返される。聞くまでもなかった。並々ならぬ
苦楽を共にしてきた仲間である。否、それ以上でもある
相手もいるわけだから。

「折角のお菓子だから、たまにはいいじゃない。
こんな時間にお茶しても。」
折りしも、今宵は満月。窓から「青い」光が差し込んでくる。
それにしても、「月の光」を「青い」と例えるのは、本当に
言いえて妙だと思いつつ。

花咲。初めて通された先輩の個室を眺めつつ。
整然としてるが、決して殺風景ではない、ここの主の
人となりがよく分かるしつらえのその中に。

棚の上に、瀟洒なつくりの鳥籠が一つ。中には何も居ないのが。

「先輩、可愛い鳥籠ですね。前に小鳥とか飼われてたんですか?」
何気に問うてみると。
「飼った事はないの。たまたま出先で見かけたのが、物凄く
気になったから買ったのだけど。…飼ってあげたかった子が
昔、居たから。」
「飼ってあげたかった…何かあったんですか?」
さりげなく問うた、その返事は。

「助けてあげられなかったの。その子。」

幼い頃の記憶。目の前の、瀕死の小鳥。もう助からないのは
目に見えている。でも、手当てをすれば、命だけは助けられる
かも。そう思っていた、その頃の自分。

「だから、せめてもの償い、なんだと思う。…今更、仕方ない
のだけれどね、こんなことしたって。」
「そんなこと、ないです。」はっきりとした返事をする、後輩。

「その小鳥さんは、凄く幸せだと思います。こんなに思って
もらえて。」
後輩からの意外な返事に驚く、先輩。後輩、続けて。
「私も小さい時、目の前で小鳥さんが死んじゃったこと、
ありました。何もしてあげられなかったのが、悔しくて、
悲しくて。そうしたら、祖母が、こう言ってくれたんです。

『大丈夫。この子は貴方にこんなに思ってもらえて、幸せ
だったから。』」

「…優しいお祖母さんなのね。そう言ってくださったって。」
先輩。記憶を振り返る。
母の鬼のような形相。あれほど恐ろしい母を、後にも先にも
彼女は観た事がなかった。
「貴方、何もされなかったの?!どこも、何もされなかったの?!
どうかしてるわよ、光一君そんなことするなんて!いいわね、
リサ!光一お兄ちゃんとは二度と遊んじゃ駄目よ!」
余りに怖くて、悲しくて。母親に
「光一お兄ちゃんが、自分の目の前で死にかけの小鳥に
手をかけた」話をしたときのことを思い出していた。

今になれば、何故母がああだったのか分かるのだが。当時の
自分にとっては、誰も死んだ小鳥のことを気にかけなかった、
そのほうが辛かったのだった。

「…その小鳥は、ただ死んだんじゃなくて。小さかった私の
目の前で」その先は、言えなかった。言葉にする勇気が
どうしても持てず。こみ上げる嗚咽に、続けられなかった。

「それでも、その子は幸せです。」静かに微笑みながら、
後輩。
「先輩がお小さい時から今まで、ずっと思ってらっしゃったんだから。
そのために、こんなに綺麗でかわいい鳥籠を手元に置いてらしたんで
しょう?忘れないようにって。」

図星である。たが、それがかつて、不幸な亡くなり方をした小鳥
への「供養」そのものだと言ったのは、後輩の花咲が初めてであり。

その時。夜更けであるにもかかわらず、さえずりが。

「鳥籠から、みたいですね。」

二人、鳥籠を見やると。そこには、窓からの満月の光の中に、
小鳥の影が浮かんでいる。さえずりは、この鳥からの
ものだった。

「こんなことって」怪異とかオカルトなどは一切信じない、霧野嬢
ではあったが、それでも目の前の「不思議」には驚きを禁じえなく。
「聞いたことがあります。」花咲、落ち着いて。
「満月の光にだけ浮かび上がる、それは綺麗な声でなく鳥の影の話です。
…もしかしたら、そのときの小鳥さんが、『思ってくれた御礼に』
現われてくれたのかもしれませんね。」

そうだとしたら。いや、そうであってほしい。霧野嬢、先程とは
別の涙がこみ上げてきて。

鳥籠に近づくと、こう囁いた。

「長い間、ごめんなさい。そして。

 ありがとう。」
影、返事をするように鳴いて。

「この子、ここから出してあげようと思うの。」籠の柵を開ける
霧野嬢。影、吸い込まれるように消えていき。

二人はただその後を見送るだけ、だった。

     <了>

…さて丑三つ時。そろそろ寝よう。

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二次創作」カテゴリの記事

コメント

こんにちはo(^-^)o

お盆の季節ですね。
こういう近未来な話しの中で、
(第三惑星地球に存在する日本国でお盆休み)→日本人にとっては大事なまつりごとなんで、なんだか取り上げて頂いてホッとしました。〈年ですかねー〉

(自分の部屋で茶飲み話しでもしていかないか)→穂波、ミヨコの事もあり、ここはやはり花咲が癒しの適役かと…

光一と小鳥のあの出来事がこんな形で出てくるなんて;確かに本編のみではリサだって精神的に終わるわけないとー

ずっと心のどこかでくすんでいたのが、満月の日に解き放たれて…花咲のおかげやな♪
決してタクマでないところが;ちゃんとポイント押さえてますよね。
本編でも、そうやったような…あっれー…

こんにちわ。コメ有難うございます。海行ってたのでお返事遅れてしまいました;。happy01

>日本人にとっては大事なまつりごと
 根っこの部分は変わらないと思うので。というか、例え宇宙葬になっても、こういった考えは科引き継がれるというか。

>あの出来事がこんな形で出てくるなんて
 実は作者である自分でさえも驚いてます。(おい)実はあの回、「鳥籠」が霧野さんの部屋のテーブルにあるんですが、そのあたりのフォローをしたくてこうなったというか。

>満月の日に解き放たれて
 本来ならば、この作品世界にファンタジーはどうよ?なのですが、そういえばノエル姉様の話は普通にファンタジーだしな、という事で。
(密かにクリスマスに対してお盆、という事で意識してたりもしますが;)この時期は「帰って」こられることですし。

>決してタクマでないところが
>本編でも、そうやったような…あっれー…
 あの時は大江戸さんでした。この方はタクマの親代わりでもあるし、霧野さんの父親代わりでもあるのですね。ご本人は独身であるにもかかわらず、息子と娘が居るような状態。だってねー、本編ではかの御仁はまだそこまで余裕はありませんでしたし。
(いつになったら彼は、というのが本編のテーマでもあったりいたしますが)

ではまた。

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