« 「奈落の青、飛び越えて」(前編) | トップページ | スマイルプリキュア!#4. »

「奈落の青、飛び越えて」(中編)

永き輪廻を、悲しみ連れて旅してきたその果てに。
実は終わらなかったので、(おい)中篇ということに
いたしました。なんか長くなってます;。

4.
「感謝の意を表す…って?」
思いがけない言葉の応酬に、リサは思わず絶句して
しまった。その先に何が起きるのか、考えても
みなかったせいでもあるのだが。
「どうすれば…何を、どうすれば良いの…。」
「それは、自分で考えてくださればいいのでは?」
すっかり困惑しきった、目の前の「あの人」の姿に、
しばし回想するトニー。

「この女は、お前にくれてやる。自由にしろ。」
あの時、総統閣下からそう言われて「彼女」の
始末を任された。

見れば見るほど、この人は「あの人」に似ている。
それこそ、怖いくらいに。ということは。

「あの人」の代わりに、自分がこの人を『独り占め』
してもいいのだろうか?強引だが、このまま薬漬けに
でもして、文字通り「お人形」にでも出来ない訳では
ないのだが。

だが、妄想は一瞬にして絶たれる。他ならぬ「彼女」
の言葉に。
「タクマ…」無意識につぶやく、『彼』の名前。そこから
全てを悟ってしまい。

「この人」は、「あの人」ではない、という事実。
そういえば、自分は「あの人」にどうして欲しかったのだろうか?

自分が幼い時に亡くなった、母親。詳しくは覚えてないが、
それなりに良い家の出だったらしい。が、没落したか
父親に当たる男と駆け落ちしたかで、自分の知るところの
境遇に。
いつしか、自分を育てるために、「あの人」は「そういう商売」を
するようになっていた。見たとおりの器量で、育ちも良かった人
だから、「贔屓筋」はかなりいたらしいのだが。

子どもとして、それのどこが誇りに思えるだろうか?生きる為、
とはいえ、「今の自分が幼い」現実を呪っていた、あの頃。

「あの人」は、それでも自分には優しく笑ってくれていた。が、
決してそれは、どこかに翳りを宿しており。

「いつか心の底から幸せな笑顔にしてあげるから。」
叶えられなかった、儚い思い。せめて一度くらいは、
「あの人」にそうさせてあげたかった。

では、今。「あの人にそっくりな人」に、自分は何をしようと
してるのか。
…少なくとも、この人にとっての「幸せ」は、自分が傍にいることでは
ない。突きつけられた、残酷な現実。
どちらを選ぶのか?自分にとっての「幸せ」と、「あの人」にとっての
「幸せ」と。
そして出した結論。

「あの人が笑顔でいてさえくれれば、それでいいから。」

5.
今居るのは、トニーの私室に宛がわれた部屋。かなり入り組んだ
奥にあり、ドアの前には、常時警備が置かれている。それでなくても
部屋には監視カメラが作動してるわけだから。

自分は、何を心配してるんだろう?そう思った刹那。

「カメラには、フェイクかけてある。警備には、一時
お引取りを『お願い』した。…プライベートにまで
干渉される義務はないからな。」トニーからのダメ押し。

ということは?
今、ここにはトニーと自分の二人きりしか居ない。

「大丈夫よ、まさか『取って食われはしない』から」
つい先ほど、同僚でありなおかつ幼なじみである、
この艦のエースその1に冗談交じりで交わした言葉が
脳裏に浮かぶ。

「取って食われる」まさに今、その状況ではないのかと。
リサは今、初めて「♀」としての本能的恐怖を覚えていた。

少なくとも、彼からは何をしてくるわけではないが。
何某かを、彼に許さないと、この場から脱することは出来ない。
何を?どこまで?
立場的に、自分のほうが圧倒的に「ホーム」であるはずなのに、
絶望感がぬぐえない。…少なくとも、命の危険、まではないにせよ。

彼の生命選択権を強引に奪ったのは、間違いなく自分もその一人である。
それから考えうる、手段といえば。

それに匹敵するだけの、「自分の何か」との等価交換。
生命の次に、大事なものといえば。
「これも…『生存戦略』なんだわ…。」頭では考えられていても、
身体は、思うように動かず。かろうじて、壁にもたれることで
その身を支えるしか術はなかった。

6.
「好きに…してください。」
ともすればその場にへたりこんでしまいそうになるのを、
出来る限りの気力を振り絞って、リサ、相手の目を見据えて、
言葉を返す。
「それだけのことを、貴方にしたのだから。自分なりに、
責任を取ろうと思います。」
声だけでなく。身体も震えているのが、自分でも判る。
精一杯気を張り詰めてるのが、何かあれば、折れてしまう
のが、すっかり目に見えている。

無意識のうちに、彼女は先ほど渡されたペンダントを、
指が真っ白になるくらいに、握り締めていた。

トニーがそれを、見逃すわけはなく。
おもむろに近づくと、彼女の明るい金褐色の頭の上に
ぽん、と手を置いて、彼女の目を真っ直ぐにしかし
優しく見据えると、こう言った。

「貴方は、大切にされていることをもっと自覚しないと
いけないな。」

   <中篇・了。今度こそ後編;>

結構長くなってしまったので、「中篇」ということに
いたしました;。あと少しのお付き合いをw。

にほんブログ村 テレビブログへ なかのひと 好きな男性と出会う 出会い漫画編

« 「奈落の青、飛び越えて」(前編) | トップページ | スマイルプリキュア!#4. »

二次創作」カテゴリの記事

コメント

こんにちは(^o^)


(自分は亡くなったあの人に何をしてあげたかったのか、あの人にそっくりな人に自分は何をしようとしてるのか)→トニー生存ならトニー&リサの最大のテーマですね;トニーはもちろん部下も助けたかったでしょう、でも最後はそれこそタクマじゃないけどプロメテよりも部下より(あの人)で、この部分がポイントで、うんうん、ママンの(そういう商売)回想(T_T)泣けてきちゃったわ…


私も、もしかして(そういう)かな?でも違うかな?と思ったんですが、もはや確定だ;多分、女性特有のご病気でお亡くなりになったのだと;

(強引だが、薬漬け、お人形)→ちょっとドキドキしますが、個人的には嬉しい♪幼少の時期のトニーは男女の世界を体で感じてる分、ここのエースの誰より〔大人〕でそれは精神的にも→だから(あなたは大切にされていることをもっと自覚しなさい)リサの(好きにして)→そんな事言えばやっぱりママンとかぶるよなー…

私もリサのようにトニーから頭をポンと叩いてほしいなぁo(^-^)o

こんにちわ。コメ有難うございます。

>ママンの(そういう商売)回想(T_T)泣けてきちゃったわ…
 実のところ、「ママンのお仕事」としては別方向も考えたことがあるのですが、この話的にはこっちのほうがしっくりくるかなあ、と。ありきたりではありますが。
トニーさんのキャラ的に、昔から漠然と、年不相応に「暗いもの」を感じてたのですが、これで自分的に納得がいったというか、そんな感じです;。

>多分、女性特有のご病気でお亡くなりになったのだと;
 もしくは、「メンテナンス不行き届きに依る、職業病」だとか;。何だか、大人になってみて始めて分かる、トニーさんの複雑な過去、というか;。

>幼少の時期のトニーは男女の世界を体で感じてる分
 健全な男児的には、かなり不適切な環境だったとしか言えないのが;。タクマも大概壮絶な過去の人ですが、トニーさんも明らかに厳しい幼少期の人かと。

>トニーから頭をポンと叩いてほしいなぁo(^-^)o
じぶんは、物陰にベストポジションを取って、底からひっそりと眺めておりますw。

ではまた。今度こそ、〆ます。

こんにちはo(^-^)o

(メンテナンス不行き届き)→結核ですね;昔の日本映画の、ゴホゴホッの喀血…そういう商売にはつきものですわ。


(ベストポジションで)→由維たんに見られるのも嬉しかったりして(^0^)/


今度こそ〆かぁ→ちょっと淋しいなあ…

こんにちわ。コメ有難うございますw。

>そういう商売にはつきものですわ。
 今はきっと別の感染症なのですが;。

>今度こそ〆かぁ→ちょっと淋しいなあ…
 まだ別ネタは続きますのでw。一応の区切り、というか。そういえば、某サンリオ女児アニメで、同じクラスの彼氏が、実は双子の兄だった、と言うのがあったばかり。もしトニーさんが男女の二卵性双生児の片割れだったとしたら、妹は(ry)、の可能性も0ではないというかwwww。
ではまた。

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「奈落の青、飛び越えて」(中編):

« 「奈落の青、飛び越えて」(前編) | トップページ | スマイルプリキュア!#4. »