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「奈落の青、飛び越えて」(後編)

全力で、未完成。今度こそ、〆ます。

7.
ビイイイイイ……。
辺り一面に鳴り響く、防犯ブザーの大音響。
「心配しないでください、これ、テストですから。」
確実に、ブリッジにも大反響しているであろう、
この物騒な物音について、まずはタクマ、無線で根回しを
済ませておくと。
「おかしいな。これ。…今は普通に鳴ってるけど?」
「って、これ、防犯ブザーだったの?このアクセサリー。」
張り詰めた糸が切れたような表情で、リサ。
「そう。で、ブリッジにも速効連絡が来るように仕組まれてる。
技術班の試作品、だそうだけど。」
「試作品…だったら、たまたま今回はバグっただけ、なのかしら。」
「それよりも、何があったんだ、一体?物凄く、これ握り締めて
物凄い剣幕でこっちに走りこんできたけど。…って、まさか?」
「そんな事、絶対にないから!」
血相変えて、疑惑を払拭しようと。余りの勢いに、それ以上の
詮索はするべきではない、と本能で悟るタクマ。
「まあ、こうして何事もなかったみたいだし、な。」
まずは興奮状態のオペレータ嬢を落ち着かせようと、この機に
乗して、彼女の肩を抱き寄せる。
…こういう事でもないと、こんなことは出来ないというのが;。

8.
「もう用件は済んだのだろう?余り遅くなると、お互いに
不利益にしかならないが?」
トニーの冷静な言葉に、我に帰るリサ。そのとおりだ。
「…では。これで、報告しておきます。」
言葉だけは普通だが、意識は既に『あちらへ』走っていた。

早くここから、立ち去らないと。
返事をするや否や、踵を返して、自分の本来の持ち場へと
全力で疾走を。

その後姿を見送る、トニー。視界からリサの姿が消えた後も
なお、暫くそこに佇んでいた。

今の身の上になったとしても、いわゆる
「トニー・ハーケンの女」という立場は、「切り札」と
しては大いに高値安定株であろう、という自信はある。
万が一、彼女が「計算づく」でそうなる事を選択したと
しても、彼は否定するつもりはなかった。

むしろ、歓迎すらする心積もりであったと。
それで「あの人」が幸せならば。
自分に向けられる笑顔のその裏に、腹黒い陰謀が蠢いて
いたとしても、それが幸せだと、彼女が選んだ道なのだから。

だが、実際は相変わらず、そんなことはなくて。
彼女の笑顔の傍には、自分は居てはならない存在でしかない
という。
自分は、彼女にどうして欲しいのか、を考えると。

一刻も早く、自分が傍から消えるしかない、という
結論にしか行き着かない。
そもそも、自分にとって、彼女は何なのだ?
「ママにそっくりな人」というのは、単なるフェイクであるのは
分かりきっていた。自分にごまかしかけて、どうするのだと。

「ちゃんと、傷つかないといけないな。…前へ進めない。」

9.
「そうだ、これ。試食しとけって、さっき渡されたんだけど。」
話題を変えようと、タクマ。
「え?これって、サンプルとして採取されてきた試料じゃないの?」
「数字は全て取っただろ?オペレータ様。後は『官能試験』だって。」
「『官能』って…:」思わず絶句するリサ。
彼の手にあるのは、一見、地球で言うところの
「バラ科リンゴ属の落葉高木樹のもの」に良く似た果実。
赤い色とか、大きさとかも同じくらいの。
がり。しゃくり。見てる間に、一口齧られて。
「あ、美味い。これ…。ごめん、先に味見したけど。」
一口齧られただけの「それ」を手渡されて。
「食べてみたら?大丈夫、美味しいから。」
恐る恐る、先ほどとは反対側に口を付けてみる。

かりり。しゃくしゃく。

「本当。美味しい。」思わず洩れた本音。
「『リンゴ』と変わらないんだ…。」
「だろ?データだけで理解したつもりにならないで、
最後は自分の感覚で確かめろって奴。あの…だからと
言って、無茶してもらっても困るけど。」
「あら、まるであたしがいつでもあなたたちを
困らせてるみたいに聞こえるんだけど?」
「その通り…じゃなくて!気のせいだから!」
いつもと同じ、気の置けない言葉のやり取りに、
リサ、ある言葉を思い出した。

「…『運命の果実を、一緒に食べよう』少し前、
女子たちの間で流行ったの。あたしはそういうの、
信じない性質なんだけど。『運命の果実』を分け合って
食べた二人は結ばれる、とかで。」
「一つのリンゴをカップルで分け合って食べるおまじない、
が流行ったよな、そういえば。」
いきなり秀人、登場。リサの手の内にあった「リンゴっぽいもの」
を取り上げていて。
「え、ちょっと、秀人君?」
「俺は、結構そういうの、信じるほうだから。じゃ、試食
させてもらおうかな。」
「待て秀人。」リンゴを持つ、彼の手首をおもむろに握り締めて、
タクマ。言葉は穏やかだが、目は笑ってない。
「それなら、後で『綺麗に切った』のを渡してやる。それで
いいだろ?」
「ふーん。我がチーフ様も、御呪いを信じられますか。」
「…お前とは一度、ゆっくりと話をしようと思っていた。
丁度いい機会だ。こっちへ来い。」
珍しく、真剣な表情で。よほど二人きりを邪魔されたのが
癪に障ったと見える。
「いいだろう。受けて立ってやる。じゃ、リサ、悪いけど
これ、預かっておいてくれ。」
先ほど取り上げた「リンゴっぽいもの」を、再び戻されるリサ。
随分勝手だわ、と思いながらも。

何故、今頃あんな「流行言葉」を思い出したのか。
視界から消えていく男子二人の背中を見送りながら、
彼女は思いに耽っていた。

自分は、大事に、されて、いるんだろうか?
先ほどの一言が、記憶の底から蘇って来ていた。

10.
トニーが「解放」されたのを聞いたのは、それからすぐ後の
ことであった。今は「プロメテ」の調査に、全力を注がねば
いけない時期であり。彼の身柄は、その事業に粉骨砕身貢献
する、という交換条件で自由を得たのであった。

「まだ何か気にしてることがあるのか?」タクマに声をかけられて。
「そんなわけじゃないけど。…もう、逢うことないのかな、
と思って。」リサ、答える。
「そんな事ないだろ?生きてるのは分かってるんだから、いずれ
また、顔合わせることもあるだろう。」
余り歓迎したくないけど、とタクマ、心の内で。
「…そうね。」相槌を打つリサ。そのときまで、彼へ「借り」を
返すのは、しばしの猶予、ということになるのだろう。

そして、トニー自身も、「モラトリアム」を必要としていた。
自分が「あの人」に求めていたのは、「ママの代わり」では
なくて。
「彼女自身」であったという。認めたら、決して実らない恋を
受け入れざるを得なくなるから。
ずっと、ずっと避けていた。だが、いつかは前へ進まないと。
まずは、事実を畏れずに受け入れよう、そして、しっかりと
傷つこう。痛みは、いつか癒える物だから。いずれ訪れるであろう、
再会のときのために。

「さよなら、リサ。」

   <後編、了>
えーと。終わりました。長かったです;。では。

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コメント

こんにちは(^0^)/

うーーん…リサってぇ、タクマ本命だけど、トニーへの気持ちもまんざらでもないのかなー?

(言葉だけは普通だが意識はあちらへ走っていた)
(そんなわけじゃないけどもう逢うことないのかな)→心のどこかでなんかちょっとは期待した部分も無いとは言えないでしょー;
タクマには[心]で、トニーには[女 ]を感じてるよーなーぁ、タクマとは活字の外で何かあったのかもしれないけど、タクマとの恋愛より複雑だ;

(トニーハーケンの女という立場は大いに高値安定株)リサがヨロメくからこんな思いを;(ちゃんと傷つかないといけないな)→どーやって傷つくんだろ?

「ありがとう、はいさようなら」ちゃんちゃん〆では絶対終わらない、ふ・た・り・おもろー♪二人とも今後に何かを期待してるだろー
(実際そんなことなくて)もし、あったらどんなふうに表現するのかな…

なんだかタクマより軍配はトニーみたく…

あーでもリンゴかじったからいいかー、タクマには防犯ブザーとリンゴのアイテムがあるさ、トランペットもあるから、うん!大丈夫!
エース二人はまた愛の殴り合いですか?秀人も無理矢理でも、[そのリンゴ]食べつくしたらよかったのに…そーなりゃもはや(*_*)

恋愛に傷ついたぶんトニーはやっぱり大人だ。

いやーもうこの何日間か、楽しい夢を見させて頂き、幸せまんたくでした。この生存話はどこかではっきりと確認したかった私でしたので、やっと叶えられて、さらに続編っぽくて生活にハリがでます。また楽しみしてまーす。

追記:もし、リサがお友達でこの件、相談されたらウザくてムカつくかも…ごめんねーリサ、あんたモテすぎよぉー。

こんにちわ。いつもコメ有難うございますwhappy01
>リサってぇ、タクマ本命だけど、トニーへの気持ちもまんざらでもないのかなー?
 彼女も「歳相応の女の子」であることを考えると、そうでないほうが不自然かと。いづれ本命君とはフラグにしても、そこに至るまでに色々あって当たり前かな、と思うので。

>どーやって傷つくんだろ?
 自覚したら、なのかも。回避するために、「ママに似たあの人」と最後まで言い続けてましたから、トニーさん。

>なんだかタクマより軍配はトニーみたく…
『大人の男的恋愛』としては完全に向こうに軍配、ですね。今の時点では。

>エース二人はまた愛の殴り合いですか?
 子わんこたちのじゃれあいみたいな物かとw。

>秀人も無理矢理でも、[そのリンゴ]食べつくしたらよかったのに…そーなりゃもはや

 その場合の「おまじない」がどうなるのか、ですねwww。

>もうこの何日間か、楽しい夢を見させて頂き、
 いえいえこちらこそ。書いていて楽しかったです。ラストはどう〆るのかで結構しんどくなったかもしれませんが、無事に終われてよかったです。とはいえ、まだ投げているほうがありますので、そろそろそちらを何とか、ではあります。またよろしくお願いいたします。

>ごめんねーリサ、あんたモテすぎよぉー。
 男子3人、というだけでもアレなのに、全員生え抜きの高スペックイケメンだし。これ、月9だったら女性週刊誌で特集組まれるでしょうか?
 だから、「自覚しないといけない」んです。彼女はw。

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