「我が臈たし悪の華」
ダンガードAの二次創作です。ありがち話ですが。
「何も教授恩自ら、このようなところに
お出向きになられなくても。」
第一の腹心の部下様、随分と下手に言葉を選ぶ。
「いや、たまには自分の目で確かめてみたいと
思っただけなのだが?」
「そうおっしゃられますのなら、どうぞご存分に
ご覧ください。」出来るだけ、この気まぐれな上司の
機嫌を損ねないように、言葉や態度を気遣いながら。
ここはフランス・パリ郊外、の某修道院。
天才科学者ドップラー教授の腹心の部下である
ヘチ氏(当時)は、「来るべき時」に備えて、
この修道院にも「それなりの援助」を施してきた。
「惑星プロメテには、選ばれた者のみが移住するべき」
趣旨に賛同して、教授に忠誠を誓う識者もそれなりに
いるが、何分にも人員の確保がいる。
こちらが思う人物を、という手もあるが、思想が
固まった大人ばかりでなく、将来有望な人材を、
それこそ「幼児期」の頃から育てていくのも
有望である、ということで、
『こちら的には古くなった技術を小出しにしていく
だけで』得た莫大な利益の一部を、こうやっていくつかの
施設に『寄付』してきた。もちろん、その見返りとして、
『将来的に有望な人材の斡旋』があるわけなのだが。
で、ヘチ氏としては、年に数回、定期的に施設に赴き、
現状把握に努めているわけなのだが。今回いきなり、
上司が気まぐれで、
「視察に同行する。」と申し入れがされてきた、という。
「あの方は、小さい子供には興味がないはず、だったの
だがな。…どこへ行かれたのだろうか?教授は?」
先ほどまで目の前にいたはずの上司の姿がない。
「本当にあの方の気まぐれには、困ったものだ。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
黄昏時。
修道院でも奥まった、いわゆる
「開かずの間」といわれている、昼間でも薄暗い、
誰も寄りつかなそうなところで。
「その子」は扉の前で、祈っていた。
「神様、僕は強くなりたい。」
輝くような金髪碧眼の、まだあどけないが
歳不相応に才気が走り出してる感の有る少年。
彼は、つい先ごろ、母親が亡くなって身寄りが
ない、ということから、この修道院に引き取られて
来たばかりだった。
幼いながらも、胆力の比類なさは頭角を現してきて
いるらしく、こうして、大人でも来ないような場所を
突き止めては、そこを自らの憩いの場所、としている
ようであった。
「誰か扉の向うにいるのだろうか?」
ドップラー教授。たまたま居合わせた「扉」の向うから
子どもの声がかすかに聞こえてきたのを、聞き逃さなかった。
そして。
「たまには、子どものごっこ遊びに付き合ってやるのも
一興だな。」運命の悪戯、というべきか。もしこのとき、
教授がいつものように「気にも留め」なければ。
「もしかしたら」の言葉は、歴史にはない、としても。
実のところ、「扉」の向うは廃墟、となっていた。
何らかの事情でその棟を壊したものの、「壁」を
壊すわけには行かず、「扉」だけが残されていた
のだが。
「おーい、この扉を開けてくれないか?
昔、魔女に閉じ込められて出られないのだ。
お前なら、開けられるだろう?」
もし、ヘチがその場に居たら、
「何を血迷われましたか」と狼狽したであろう。
ドップラー教授、いきなり見知らぬ子ども相手に
「即興芝居」を打ち出したのだから。
「もし開けられたら、僕の願いを聞いてくれる?」
少年、驚きつつも、問いかける。
「いいだろう。では、開けてみよ。」
恐る恐る、さびて古ぼけた取っ手を廻してみると。
がたん。
扉が、開いた。
そこには、紺色の制服の上に、さらに黒地のマントを
被った、かなり大柄の男性~しかも、スキンヘッドでも
ある~の姿があった。
何故扉が開いたのか?単純なことである。
「誰も開けようとしなかった」からであり、ドップラーは
「ただ開けた」だけであったのだが。
幼い少年には、それだけでも十分に畏敬の対象となり得た
のであった。
「あんた…神様か?それとも悪魔?」
「神、と言いたい所だが。悪魔、でも
面白そうだな。むしろ、そのほうが格好いい
かもしれんな。何よりも、強そうだ。」
ドップラー、珍しく、「乗り気」である。
「神様でも悪魔でも、どちらでもいいや。
扉を開けたんだから、僕の願い、聞いてくれるよね?」
「ものにも依るが。…で、何だ?」
「強くなりたい。というか、僕を強くしてくれ。
あんたならしてくれる、そんな気がするんだ。」
少年。真っ直ぐに目の前に立ちはだかる、初対面の大人を
見据えながら言った言葉。
普通なら、
「何馬鹿なことを言ってるんだ。」とか適当な言葉で
やり過ごすところであるのだが、このときばかりは
違った。
幼いながらも、目の色が違う。それに、自分のような
大人(しかも大柄な男)を目の前にしても、
身じろぎしない、その胆力。
「母さんが目の前で死んだのに、僕は何も出来なかった。
だから、強くなりたいんだ!」叫ぶ少年。
「…気に入った。いいだろう。今日からお前は、
私のところに来るんだ。私の名は、ドップラー。
世間からは天才科学者、と呼ばれている。これから
望むように、お前を強くしてやろう。
その代わり、決して楽な道ではないが。覚悟はあるか?
少年。」
「もちろん、です。」
本当は、思いもよらない急展開に動揺しきっていたはず、
なのだが、精一杯おくびにも見せず。その態度がなおのこと、
教授の興味を引くことに。
「まだ小さそうだが、歳はいくつだ?」」
「6歳、だ。子ども扱いするな。」
「6歳、か。」
教授はふと、「一文字の小倅」のことを思い出していた。そういえば、
あの子どもも同じ年頃だったはず。
出る杭は打つ手はずは、整えておいた。しかし万が一。
あの小僧が自分の前に立ちはだかることとなったら。
そのときのための「切り札」として、この子を育てておくのも
悪くはない。
「では、来い。…そういえば、名前をまだ聞いてなかったな?」
少年、真っ直ぐに教授を見据えて、切り返した。
「トニー・ハーケン。」
「トニーか。いいだろう。いずれ『我が臈たし悪の華』に
してやろう。」
西の空には既に陽はなく、下弦の月が沈むところであった。
<了>
総統閣下と、その秘蔵っ子との出会い話です。在りがちな
設定ですが、元ネタは、既にお分かりな方もおられると
思われますが、
ハートキャッチプリキュア!
です。(おいこr)しかも劇場版。「狼男」と「悪の華」が
丁度合致するということで。一度これに基づいて話作りたいな、
と思ってたので。
時系列的には、まだ「総統」を名乗っておられなかった頃に
設定しました。
…こうやって見ると、総統閣下は、「親子」であるよりも
「遊び相手」が欲しかったのかも、と勘ぐれそうです。
(トニーは明らかに『父親』を欲しがってるのですが)
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コメント
この記事へのコメントは終了しました。
やっぱトニーとドップラーってEC諸国が舞台ですよね、っつうか、日本じゃ似合わないし;
それも、パリだってぇ〜。ドップラーって薔薇しょってたしーぃ(プリキュア?)
ドップラーとトニーの出会いってずうっと頭で妄想してたのですが、活字になってよかったですぅ(^0^)/
二次創作で初めてトニー様出てきたっぽい。出会い編は扉がキーポイントのような…守りきれなかった母親への恋慕が強すぎて扉を開けたトニー様、
[強くなりたい、6歳と違う]→トニーのキャラそのもの。
ドップラーはトニーを子育てよりも遊び相手ということは、やはりアレですかねー;いやはや、もちろん女性より戦闘は男子であるほーがいいのですが…
なんせ[可愛い奴]ですよね。
世間でありがちな話しだと、ヘチさん、あわよくば、自分のご令嬢をトニー青年のお嫁さんに考えてたよーな;なんせ(ご令嬢)ってトニー様もおっしゃて。
いえ、単なる自分勝手な憶測で…
この組織もいろんなドラマが考えられそうで。
投稿: GO!GO! | 2011年11月12日 (土) 12時21分
コメ有難うございます。
舞台がパリ、というのは、何か「それらしい」のもあるのですが、元ネタがガチで「パリ」舞台だったという。
(「ハトプリ劇場版」でググればヒットします)
実はほぼまるっと↑キャラだけ入れ替えただけ、なのですが;。初めて劇場で見たとき、
「これ、思い切り某総統閣下と秘蔵っ子だよねw」だったという。(どんだけ)
>やはりアレですかねー
アレ、でしょうw。(おいこら)断鉄さんを「マスクマン」にしたのも恐らくは(ry)。
>子育てよりも遊び相手
トニーは、父親だと思ってたはず、なのですが。もしかしたら総統閣下のほうが「親」としての自覚が薄かったかも。
(これは、モデルであるサラマンダー伯爵@ハトプリ のほうが情はあった)
>自分のご令嬢をトニー青年のお嫁さんに考えてたよーな
ジュディミラの二人が「命がけで」阻んだのかもw。
「フリーゼを(ry)だなんて、
絶対に許せない!」とかで。
投稿: 由維 | 2011年11月12日 (土) 23時40分