「宙に輝け、満開の花」#3.
「自由と正義の名の下に・2」
花咲つぼみが新クルーに着任する、ほんの少し前になされた、
旧メンバーに向けられた内示にて。
「こんなに若い女の子が次のクルー候補なんですか?
時代が変わったというか。…あ、すまない;。」
近くにいる「歴戦」オペレータの物言いげな視線を
感じて、秀人、発言を修正する。
次のプロメテへのフライトに向けて、新たなクルー候補が
現メンバーに提示された。
前回、目的地到着寸前で合流した、
『元・ドップラー軍団』のメンバーもさることながら、
いざ、現地に到着してみると、地質学・植物学関連の
専門家が「非常に」手薄どころか「皆無」であることが
判明した。
本来が、「現地調査」であるはずのこのフライトが、
実際のところは、
「推進派同士の内ゲバ」となったところからも、
どういった人選がなされたかが窺い知れるところ
ではあるけれども。
それ以上に。
何ゆえ、再び「地球」に一時帰還せねばならなかったのか。
実際は「別の目的」があるにせよ、表向きは
「新天地への誘い」である。実のところ、未だに
「移民反対派」の声は、依然としてまだあるわけで。
こちらでは「調査過程での、ドップラー派との抗争」は、
「なかったこと」にされていた。
もちろん、現場からは大いにブーイングはあったのだが。
どれだけの人が犠牲になったと。
それらを無視するのかと。
実のところ、あれだけの規模の戦闘が繰り広げられた
のである。それ以前にも、有識者の失踪などが続いていた
ので、完全に「なかったこと」にはならずに、
「都市伝説」という形で人々の口に登っているのではあるが。
そういった、「推進に隠れた闇」を払拭するためにも、
「植物関連のエキスパートである、若い女性クルー」が
新たに加わることが、自ずと必須になっていた。
「要は、マスコミ対策かよ。」うざそうに、秀人がちら、と
『相棒』のほうを見てつぶやいた。
(『奴ら』のせいで、こいつは子どものころから
散々酷い目にあってきたというのに?)
「そう言うな。使えるものは使えばいいだろう?」
相方を諭すが如く、答える。
「・・・大人になったな。このあたりに関しては。」
なけなしの皮肉をこめて、秀人、言葉を投げ返す。
「このあたり、の他はまるで成長してないみたいに
聞こえるけど?気のせいじゃないよな?」
絡む『相棒』。珍しくしつこい。
「静かに。これは『こちら側』からの要請も含まれた
人選であることを、あらかじめ皆に伝えておく。」
大江戸博士が空気を戻す。静まる一同。
「今回の計画には、本来なら『あの』花咲博士も
参加するはずだった。」
「花咲博士といえば、親子二代で
『植物が環境と人の心理にに及ぼす影響』を
研究されていた、その方面での権威だった?」
「でも、突然、一身上の都合でこの計画から
退いた後、一切音信不通になっていたという?」
エース2人が、相次いで問いかけると。
「そのとおりだ。過去の記憶のシミュレーション
システムの開発にも、深く関与されていた。長い閉鎖空間下での
生活上でのメンタル系維持関連でも、本当ならもっと
勧められていたはずだったのだか。今回加入する
『花咲つぼみ』は、博士のお孫さんにあたる。」
「こちらとしては、途中で棚上げとなったメンタルヘルス関係の
研究も、是非孫娘さんである彼女に再開してもらいたい。そう思い、
交渉したら、快く承諾してくれたのだ。」
「こちらも、『親の意思を継ぐ子ども』って訳ですかね?」
思わず、口を挟んだ秀人。
ーーここにも、『そんな子』がいるんだ。どれだけ
いるんだよ、全く。
声には出さなかったが、心の中で彼はつぶやいていた。
そして、今日。
花咲つぼみが、この基地にやって来る。
(第2話、了。次回に続きます。)
第3話は、来週の土曜日頃にアップ予定です。
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